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舘  昭(たち・あきら)
桜美林大学教授。専門は教育学。著書に『原点に立ち返っての大学改革』(東信堂)、『岐路に立つ大学』(放送大学振興会)など多数

第6回 大学改革と評価

2012/01/01

 大学改革には、多様な形で「評価」が組み込まれている。本連載の第1回で、大学改革日常化状況の端緒を、1991年の大学設置基準の「大綱化」と記した。大綱化は、大学にカリキュラム編成等での自律性を与える一方で、それまでは一部で自主的に行われてきた「自己評価」を、全大学に義務として課すものでもあった。
 この義務規定は2002年には、設置基準から学校教育法に移され、大学は国の認証を受けた評価機関による大学の総合的な状況に関する評価を7年以内ごとに、専門職大学院の教育課程については5年以内ごとに受けることとされた。評価機関には、独立行政法人の大学評価・学位授与機構、財団法人の大学基準協会、日弁連法務研究財団、社団法人の日本技術者教育認定機構、NPO法人のABEST21(経営系)など、多彩な形態のものが存在する。
 同時期に導入されたものに、国公立大学の「法人評価」がある。行政改革の一環として、国立大学は04年に一斉に、公立大学はその後に、法人格を得て、6年間の中期目標の下に自主的な運営を行うようになった。この目標の達成状況をチェックするために、国と各都道府県に評価委員会が置かれ、各年度と中期目標期間の終期に評価が実施されている。しかし、それらすべての評価において、自己評価が行われ、審査には大学人が関与するピア・レビューの要素を組み込んでおり、外部性とともに、大学の自治と学問の自由への配慮がなされている。
 大学内部では、各種の自己評価のツールが開発されてきた。各学期の終わりにアンケート形式で実施される学生による授業評価は、設置基準の大綱化の時期に導入され、いまや一般化している。教員の業績はデータ・ベース化され、業績を賞与等に反映させる大学が出てきた。職員の人事に業績評価を組み込んだ大学もある。昨年からは、教員の業績も含む各種のデータの公開が、大学に義務づけられた。こうした中で、評価を担う部門が常設化され、自大学の各種データを収集・分析するIRという、アメリカ生まれの概念が定着をみせている。
 ところで、これら公的な評価に似たものとして、民間による各種の大学ランキングがある。もともと、大学は入学試験の難易によって順位づけられる傾向にあった。しかし、大学の機能全体の、総合的な指標を用いての順位づけは、1983年のアメリカの大手週刊誌『USニューズ&ワールドレポート』のランキングをもって嚆矢とし、同種の評価が全米を席巻している。日本では、94年に朝日新聞社が、「受験偏差値と神話に代わる新たな評価を求めて」というキャッチフレーズでランキングを開始した。
 加えて、2004年に、イギリスの老舗出版社の『タイムズ』が、世界の大学のランキングを開始し、例えばその年の東大の順位は12位、昨年は30位であった。現在は、その前年に始まった上海交通大学の世界大学学術ランキングも含め、多様なランキングが展開されている。日本の大学も、世界の高等教育市場において評価を受ける状況になっているのである。
 これらの評価は計れないものを計り、比べられないものを比べるといった理不尽さを伴っている。しかし、それは避けては通れないものとして存在し、大学はそれの持つ理不尽さを飲み込み、自らの質の向上につながるものへと転化していくという課題を負っているのである。

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