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第1回 学歴の認識と影響

2013/04/17

学歴入門 真実と対応策

第1回 学歴の認識と影響

          橘木 俊詔


■学歴は人によって解釈が違う
 人々が学歴という言葉を聞いたとき、思い浮かべる内容には次の二つがある。第一は、中学・高校・短大・大学・大学院、あるいは専門学校というように、どの段階の学校まで進学して卒業したかという点。第二は、どの学校を卒業したのか、もう少し具体的には名門校か非名門校か、あるいは有名校か非有名校かということである。日本では例えば名門校を卒業すればその後の人生が有利に運べると信じられてきたので、第二の意味で学歴を考える人が多い。
 この学歴を巡る話題は、誰がその学歴を得るのか、そしてその後の人生への影響はどうか、学校の公立(国立を含む)と私立の差がどうからんでいるか、保護者の経済力や発言力の効果はどうか、本人の学力の役割はどうか、結婚の相手はどうかなど、話題が満載である。これらのことを本シリーズ「学歴入門 真実と対応策」で論じてみたい。
 学歴の意味はどの段階の学校まで進学したかによって思いが異なる。中学や高校で終えた人と、大学まで進学した人との間で感じる響きは異なる。前者の人にとっては大学に進学していないという負い目があるかもしれず、学歴とは卒業学校の段階の違いで意識するだろう。一方大学卒業者の人にとっては自分の学歴よりも低い中・高卒の人のことは気にならず、むしろ大学でもどの大学を卒業したかを意識するので、大学の名門度のことを学歴と解する可能性が高い。
 前者の意味の学歴に関しては、その影響力が最も出現するのは就く職業の差である。一昔前であれば、大卒と高卒がホワイトカラーになっていて中卒の多くがブルーカラーや農・商業従事者であったが、最近では高卒にも従来の中卒の就いていた職業に就く人が多い。これは戦後一貫して上級学校への進学率が上昇して、高卒や大卒の人が増加したことによる効果であり、いわゆる多くの人が就きたい職業(例えばホワイトカラー職)では高学歴が必要となったことによる。それと戦争直後は農業が中心、その後工業化による製造業が進展し、最近は第三次産業という産業構造の変化によって、社会が必要とする職業構造の変化の影響をも受けている。


■日本の学歴社会の程度は他国よりも弱い
 一方の大学の名門度、有名度に注目した学歴に関しては、日本は学歴社会であると信じられ、東大出身者を筆頭にして名門校出身者が有利な人生を送ることができるとみなされてきた。実は拙著『学歴入門』(河出書房新社)で明らかにしたように、日本は皆が考えるほどの学歴社会ではなく、G5(米・英・仏・独・日)の中ではドイツは学歴社会ではないが、米・英・仏はいろいろな基準で評価すると日本以上の学歴社会である。
 例えば、アメリカであれば企業に入社するときの初任給が大学名によって異なっている。特にMBA(経営修士号)をどの大学で受領したかによって初任給が大きく異なる。戦前の日本企業でも卒業大学名によって初任給が異なっていたが、現代ではそれを実行している企業はほとんどない。イギリスにあってはオックスフォード、ケンブリッジ大学の卒業生、フランスにあっては大学ではないグランゼコール(高等専門学校とも称される)を出た人の職業・地位上の有利さは、日本の東大卒以上である。
 名門校卒業の有利さを決める基準は、所得、就ける職業、地位などいろいろある。そのいろいろな基準を具体的に論じることと、日本は相対的には学歴社会ではないことを次回以降に論じることとする。ついでながら隣国の韓国と中国は日本以上の学歴社会であり、欧米とアジアの共通点と違いをも議論する。

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