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第4回 日本は学歴社会か

2013/07/16

学歴入門 真実と対応策

第4回 日本は学歴社会か

            橘木 俊詔


■日本の過去は学歴社会だった
 諸外国と比較すると日本の学歴社会の程度は弱いが、日本人は日本を学歴社会だと思っている。外国の実態を知らない人が多いことや、周囲の高い学歴(高校、大学といった学校の段階による差と名門校出身かという二つの基準で評価)を得た人が、より有利な人生を送っていることを実感しているからである。
 日本の学歴社会の象徴は明治時代における官僚の東大重視から始まった。明治新政府は富国強兵・殖産興業の目的を達成するには、指導者として高級官僚の役割が大切だと考えた。官僚養成所として東京帝国大学を創設して、高文試験(官僚になるための試験)に合格した人を役人に登用したのである。その合格者の大半が東京帝大卒業者であり、採用後の昇進と賃金処遇は現代では考えられないほど恵まれており、その伝統は20 年ほど前まで引き継がれた。
 国の経済発展は多くの民間企業の誕生を促したが、そこでの人事政策においても官僚制度にならって特定の学校(帝国大や商科大、早慶大など)を卒業した人が多く役員になることが一般的となった。表はこの状態が戦前と戦後のしばらくは続いたことを示している。大企業の経営者になるには、帝国大を筆頭とした名門学校の卒業生が有利だったのである。
 官僚のみならず民間企業において名門学校卒の羽振りがよいのであれば、多くの日本人に日本は学歴社会の国であると思い込ませるのに十分だったのである。


■そこそこの学歴社会・日本
 現代ではどうだろうか。官僚の世界ではエリート官僚の優遇さはかなりなくなったし、官僚の地位低下も手伝って、以前のような東大独占状態は崩れている。民間企業にあっても企業間や社員間の競争が高まり学歴だけで評価をするような時代ではなくなっている。「名門校出身者が社会で有利である」という意味での学歴社会は着実に弱まっている。
 ただし完全に消滅したわけではない。一つには企業、大企業にあっては新卒の採用に際して、どこの大学を卒業したかを企業側は注視している。一昔前では「指定校制度」というのが存在して、「どこどこの大学の在学生のみ受験資格あり」と求人を出していたほどである。現在は誰でも受験資格ありのような顔をしているが、現実にはエントリーシートに書かれた大学名を基準に、面接者を決定している。
 なぜ企業は大学名にこだわるのだろうか。第一に求職者全員の面接を行うことは不可能なので、あらかじめ予備選抜をせねばならない。第二に、新卒者はまだ就業経験がないため、どれほどの仕事ができるかを判断できない。第三に、難関大学の出身者は難関入試を突破するために大変な努力をしたであろうから、入社後も努力をするに違いないと期待できる。こうして新卒採用の段階での学歴社会はまだ生きているのである。
 しかし採用後は本人の仕事振りで人事評価される時代となっている。
 学歴社会がまだ残っていると考える第二の証拠は、特定の職業に就くには大学で特定の科目を学ばねばならないし、資格試験に合格して初めて職に就ける分野がある。代表として医師、薬剤師、法曹の世界を挙げておこう。大学あるいは大学院で医学、薬学、法学を勉強するのが条件なので一定の学歴を獲得する必要があり、これは学歴社会の顔の一つである。

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