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第6回 医師・薬剤師と法曹関係者は特殊な学歴社会

2013/10/18

学歴入門 真実と対応策

第6回 医師・薬剤師と法曹関係者は特殊な学歴社会

            橘木 俊詔


■時代と共に変わる人気学部
  企業や官庁における就職と昇進に関して、名門校出身者が有利かどうか、時の経過と共にそれが希薄化していることは事実である。企業や官庁では大学の出身学部もさまざまだが、いくつかの職業においては特定の学部の卒業者が圧倒的な比率を占めている。医師の医学部、薬剤師の薬学部などがその典型である。裁判官、検事、弁護士の法曹関係者のほとんども法学部か法科大学院出身者である。何を大学で学んだかが決定的に意味を持つことから、これらの職業は特殊な学歴社会にいるということになる。
 戦後20 ~ 30 年の間に最も人気の高い学部は理工系学部であった。高度成長の先端を走った製造業において技術者の養成が大きく期待されたため、優秀な高校生が大学の理工系学部に進学したのであった。当時は、国立大学の工学部増設が多く見られたし、数学・理科に強い優秀な生徒が多く入学を希望した。
 ところが日本の企業と官庁では、技術者よりも文科系出身の事務職員が昇進に有利だったため、優秀な理工系専攻者はやや不遇な職業生活を送らねばならなかった。しかもいまでは日本の産業構造において製造業の比率が低下したことも影響して、理工系学部の人気度が低下することとなった。大学の工学部の先生方から優秀な人材が入学してこないという嘆きの声が聞こえてくるし、数学・理科という基礎科目の補習が入学生に必要であるとの現実もある。


■特殊な学歴社会を持つ職業
 この傾向の代わりと言って良いかもしれないが、医学部への進学希望者の数が増加して、医学部進学競争は異様な高まりを呈するようになった。これに応じて医学部の入学偏差値は非常に高くなる時代となった。薬剤師を養成する薬学部の人気も医学部ほどではないが高まっている。
 どれほど医学部入試が困難であるかについては次の図をご参照いただきたいが、そこではいくつかの国立・私立大学における医学部と理工農学部の入試難易度が偏差値で示されている。ほとんどの大学で医学部の難易度が理工農学部よりもはるかに高いことが分かる。大学によっては、医学部の入試最低点が他の理工農学部や文科系学部の最高点よりも高い場合もある。医学部には偏差値の高い学力優秀者が集中しているのである。医師の収入の高さや安定した職であること、人間の生命を助けるという仕事の尊さによって他人に尊敬されるなどといったことが人気の秘密である。
 これは好ましいことだろうか。医師になるには学問ができなければ困ることは確実であるが、全員が異様に高い学力を持たなくてもよい。手術がうまくなるような手先の器用さや長時間の手術に耐え得る体力の強さ、患者とうまく会話のできるコミュニケーション能力、チームワークが取れる協調性などの資質も大切である。勉強しかできない人が医師になる社会はゆがんだ姿と映るが、いかがであろうか。
 もっと重要なことは、医師以外の職業においても優秀な人が期待されているということだ。例えば技術者や学者、政治家、あるいは官僚、法曹、経営者など多くの職業がある。
 医師、薬剤師、法曹関係者に共通なことは、資格試験に合格せねばならない職業であるという点だ。学歴が資格取得の前提になっていることが、ここでいう学歴社会の意味である。

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