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第46号(令和2年4月30日発行)笑伝塾 塾長・殿村政明さん

2020/05/08

〝笑い〞を活かして
心の扉を開く

笑伝塾 塾長 殿村政明さん






























 元・お笑い芸人の経験を活かし、円滑なコミュニケーションを行うため「笑いのスキル」を身につける研修やセミナー、個人塾を開いている殿村政明さん。
 笑いによるコミュニケーションは相手を思いやる「大人の上質な気配り」だと語る殿村さんに、これまでの人生ストーリーについてお話をうかがいました。


お笑い芸人を辞めて営業職転進 笑いの力で相手との壁をなくす
 10代でオール阪神・巨人師匠の元に弟子入りし、吉本興行所属のお笑い芸人として友人とコンビを組んで活動を始めました。コンビ解散後、ピン芸人として活動を続けて数年が経ち、「ここで一度リセットして企業に就職しよう」と考え、ハウスメーカーの営業職に就職しました。
 しばらくまじめに働いていたのですが、営業成績はあまりよくありません。そこで営業成績が良い人はどのように営業をしているのか気になり、当時営業成績がトップだった人に同行させてもらいました。
 その人はとてもおもしろい方で、お客さんのところへ行っても、パンフレットを広げて説明するようなことをしないんです。「奥さんに怒られてフライパンで叩かれた」なんて雑談をしているうちに自然と相手の懐に入り込んでいく。そこで私は、「売るよりもまず相手の心を開くこと」が重要だということに気がつきました。
 笑うとリラックスして、そこからまじめな話に入るととても反応が良くなります。それまでに培ってきた笑いのスキルを、〝ウケる〞ためではなく、相手にリラックスしてもらい距離を縮めるために実践していくと、そこから約半年後には営業成績が支店だけでなく全社のトップになっていました。


笑いのスキルは誰でも磨ける
研修の講師や「笑伝塾」開塾
 その後私は独立したのですが、自社の社員でも相手との壁を壊すのが苦手な人が何人かいました。そこで笑いを活かしたコミュニケーションについて、理論的に話をしたところ、外部の方から「御社の雰囲気は素敵ですね」と褒めていただくようになりました。そこから少し経つと、業績も上がっていきました。
 「おもしろい人間に生まれ変わる」というのは難しいかもしれませんが、ちょっとおもしろいことを言ってみたり、言葉のチョイスを工夫したり、はたまたジェスチャーや言い方を変えてみたりということは可能でしょう。そうした内容を研究してスキル化し、専門的に活動していくことにしました。
 現在は教育現場から病院、企業まで、幅広く研修やセミナーを行っています。研修を受けた方から、もっと継続して教えて欲しいという要望をいただき、個人で1年間通う「笑伝塾」も開塾し、卒業生は通算で2000人以上になりました。


スキルと同時に人間力を磨く
相手を思いやる気持ちが大切
 塾生には、学んだことを日常生活の中で実践して、その報告書を一週間に一回提出してもらっています。それをフィードバックしていくうちに、内面から考え方が変わっていきます。ですから、コミュニケーションスキルとは言っていますが、実際には人間力を磨く塾だと言えると思います。
 塾では「10秒でつかむ挨拶」から、人前で話す度胸をつけるための漫才の練習まで、幅広い内容を展開しています。漫才というのは、ベクトルが自分に向いていたら笑いは取れません。相手がどう思うかを考える心が必要になります。コミュニケーションも同じで、「自分が緊張していたら相手に気を使わせてしまう」という思いやりが大切。コミュニケーションは「愛情」と「勇気」です。無反応だと話しづらくなりますから、「相手の話にリアクションをとる」ことなどは、まさしく愛情が必要なのだと思います。あとは相手より先に自分の心を開いて、「こんなことを言ったら変だと思われないかな」という考えをなくして話すという勇気も必要ですね。
 笑いの根本は目に見えない心の気配りです。コミュニケーションは簡単に手を抜けてしまいますが、それで相手に気を遣わせてしまうのはあまり良いことではありません。笑いは「大人の上質な気配り」ですから、日々トレーニングをして「コミュニケーション筋力」を強化しましょう。


行動していれば「なんとかなる」
考え過ぎて萎縮しないことが大切
 自分が将来どのような生活をしているのか、3年刻みで想像してください。私は勉強が得意ではありませんでしたから「このまま漠然と進学するよりもすぐに働いたほうが一生懸命生活できる」という想像がつき、働くことを決意しました。
 ただし、先のことを想像してひるまないことが大切です。人生は思い通りにいかないものですから、考えすぎて身動きが取れなくなってしまったら元も子もありません。考えて行動を起こしてきた人であればなんとかなるものですから、怯まず目の前のことに取り組んでいってください。
 私は軍師・黒田官兵衛の「戦いは考え過ぎては勝機を逸する。たとえ草履と下駄とをちぐはぐに履いてでもすぐに駆け出すほどの決断。それが大切だ」という名言が大好きで、本当にその通りだと、深く共感しています。せっかくやりたいことがあるのに、条件が整うのを待っていたら時間ばかり経過してしまいます。草履と下駄が揃っていなくても、「後で揃う」くらいの気持ちで行動を起こす勇気を持ってください。




とのむら・まさあき●昭和43(1968)年兵庫県明石市生まれ。株式会社ヒューマンコメディックス(本社神奈川・鎌倉市)代表取締役。笑いのコミュニケーションセミナー「笑伝塾」塾長。お笑い芸人、ハウスメーカー営業マンの経験を活かして、「笑い」をキーワードにコミュニケーションスキルアップを目的とする研修やセミナー等を開催している。



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