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第2回 コロナ時代の日米韓台の大学教育❷

2021/07/20

連載 2040年に向けての大学教育

第2回 コロナ時代の日米韓台の大学教育❷

山田 礼子

 前回から引き続き、今回は多くの国々が希求し、実践してきた21世紀型教養とも言えるグローバル・コンピテンス(以下、GC)の大学教育を通じての修得状況が、コロナ禍以前・以後においてどのような状況であるかを、台湾・米国・韓国・日本の4カ国・地域で比較してみよう。GCについては、24項目を1〜4点(「全く習得できていない」から「かなり習得できている」まで)という幅で尋ねた。いくつかを例示する。行動面では、「異文化の環境でも生き抜くことができる」「異なる文化背景を持つひとと協働できる」「複数の言語でプレゼンテーションできる」等が含まれる。知識面では、「人文科学の知識がある」「社会科学の知識がある」「理・工・農・生命科学系分野の知識がある」「情報科学分野の知識がある」など、専門分野だけではなく幅広い分野の知識を持っているかを尋ねた。
 その結果、米国と韓国ではコロナ禍以後、GCに関する修得状況が全般的にそれ以前より低下していた。米国では24項目中22項目、韓国では24項目中23項目で低下していた。一方、台湾では実際の行動に関する項目は低下したが、知識の習得や態度に関する項目は上昇した。この3カ国・地域の点数を比較すると、コロナ禍以前の点数が全般的に高いのは米国であり、コロナ禍以後も22項目で低下してはいるものの、各項目の値は全般的に高かった。台湾の各項目の値には大きな変化はない。韓国はコロナ禍以前では、台湾と各項目の点数にはそれど差異はないが、コロナ禍以後では各項目の点数は最も低かった。
 一方、日本はコロナ禍以前・以後に、全項目の値が3カ国・地域に比べて低く、24項目中23項目で低下していた。なお、その低下した項目は韓国と同じで、日本と韓国の低下傾向は類似している。
 コロナ下における授業の形態とGCの修得状況との関連を見てみよう。台湾では、韓国・米国と比較して全分野で対面式授業の提供比率が高かった。日本では、2020年10月以降、文科省から「できるだけ対面式授業を増やす」という要請もあり、後期の授業では対面式を全面的に導入する比率はむしろ韓国・米国よりも高く、2割近くもあった。そのためなのだろうか、3カ国・地域と比べ、オンライン式授業の実施比率は低かった。
 オンライン式授業の実施が米国や韓国のGC修得状況の低下に影響を及ぼした。台湾では対面式授業が行われていたことから、それほど低下に影響は与えていない。一方、日本では米国や韓国よりも対面式の実施率は高いが、オンライン式も行われ、もともと低かったGC修得がさらに低下したと言える。
 次に、グローバルな事象への関心について日本の状況を見る。ここでは、「母国以外の文化への関心」「海外での研修やインターンシップへの関心」「海外の大学への留学の意向や計画」「グローバル規模の問題や課題への関心」などの7項目について、コロナ禍以前と以後での自己評価を尋ねた。コロナ禍以前と以後では、尺度が異なるため点数は比較できない。コロナ禍以前・以後共に日本は3カ国・地域に比べて、グローバルな事象への関心が全般的に低かった。しかし、コロナ禍以降、「低下した」という割合が他国と比べても高くはなく、「変化していない」という比率が高いという特徴がある。
 近年、日本では政策的にも留学生の増加、学生の送り出し等の国際化が進展しているが、日本人学生のグローバルな事象や海外への関心は他の3カ国・地域と比べても低い。コロナ禍により海外との交流がストップした状況だったが、加えて、グローバルな事象への関心の低さがGCの修得に影響を及ぼしているのではないだろうか。海外に実際に行かずともグローバルな知識を十分に得られるというオンライン授業の利点を活かした工夫が求められる。




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