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第6回 社会人の学び直しとCBEの可能性
2021/12/20
連載 2040年に向けての大学教育
山田 礼子
日本における「社会人の学び直し」が政策的にも推進されるようになって久しい。諸外国に比べて学び直しに参加する社会人の比率は低いが、産業界・経済団体等によるび直し推進策への理解と被雇用者の実践の機運が高まりつつある。特に、コロナ禍を経験したことにより、職場での働き方改革が進展した中で、オンラインを通じた学び直しの機会の増加により、社会人にとっても新たなチャンスにつながると期待できる。
欧米においては高等教育機関に占める25歳以上の成人学生比率の平均は21・1%
(OECD『Education at a Glance 2012』)であることは、リカレント・モデル定着の証左とされてきた。このリカレント・モデルは日本での「社会人の学び直し」に相当する。2016年では、学士課程での25歳以上の入学者割合、修士課程での30歳以上の入学者割合、博士課程での30歳以上の入学者割合に分類されている。
示されたデータによると、OECD平均はそれぞれ15・8%、21・9%、43・7%であるのに対し、日本は2・5%、13・2%、42・7%である(OECD『Education at a Glance 2018』)。この数字からは、修士課程以上の高学歴層の「学び直し」、あるいは「リカレント教育」でOECD平均との差が縮小していることが分かる。社会人対象の学び直しの教育プログラムでは、従来から対面式と併用でオンライン授業が行われているビジネス・スクールなどで、オンラインによる教育も実施されてきた。こうしたビジネス・スクールは忙しい社会人にとってオンラインで最先端の授業内容を受けることができると評価も高い。加えて、コロナ禍を契機に世界中で、高等教育段階での非対面型授業であるオンライン授業が一気に広がってきた。コロナ時代のニューノーマルとして、非対面型授業は、高等教育の一形態として定着していく可能性も高い。そこで、新しい可能性の広がりを視野に入れて、成人学習者に向けて展開してきた米国のオンライン授業とそれによる教育成果の評価法を紹介する。これは、成果基盤型教育(Competency Based Education、以下CBE)と呼称され、米国では近年CBEを導入する高等教育機関も増加している。米国の地域基準協議会は「CBEとは成果志向型学習で学位や他の資格取得へとつなげる教育である。機関での学修の結果として、学生が何を学んだかをコンピテンスとして明示・提示することであり、コンピテンスは知識やその理解も包摂している一方、CBEでのコンピテンスは学生がそうした知識を持って何ができるかを重視する」と説明している。
CBEは時間を基礎とする単位制とは異なり、明確に定義されたコンピテンスの修得の評価に基づき単位認定をすることである。例えば、評価アプローチの一つであるダイレクト・アセスメントアプローチは学修成果の獲得を直接にさまざまな具体的なアセスメントにより評価するもので、学生が獲得したコンピテンスを確実に学修成果として提示することが基本となる。直接評価に主に活用されるコンピテンスの枠組みは多様だ。CBE課程は看護等の医療系やビジネス系関連、情報系職業分野のプログラムでの採用比率が高く、職業資格に関連するコンピテンスを明示するにあたって、職業教育認証評価団体の基準等が参照されることも多い。
CBEとは学びの成果を志向する学修評価で、その課程は学位や他の資格取得にもつなげられる。コロナ禍により働き方が変化している現在日本でも社会人や成人の学び直しにオンラインを活用したCBEを導入できるのではないか。仕事との時間調整で学び直しをする機会が少なかった社会人にとって、CBEとオンライン教育の組み合わせは、大いに期待できる21世紀型授業と言えよう。
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