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福永 栄一大阪成蹊大学 現代経営情報学部 准教授
fukunaga@osaka-seikei.ac.jp

略歴:
昭和35年山口県生まれ
昭和59年3月静岡大学理学部物理学科卒業
昭和59年4月:商社に入社
14年間情報システムの開発・運用を手がける。
平成15年4月:青森大学経営学部講師
平成18年4月:青森大学経営学准教授
平成20年4月:大阪成蹊大学准教授
資格:
中小企業診断士、ITコーディネータ・インストラクター
公職:
青森地方最低賃金審議会委員など
著書:
環境会計と情報開示(平成12年11月、税務経理協会)
中小企業の国際化と海外進出(平成14年6月、中小企業診断協会)いずれも共著
受賞:
(社)中小企業診断協会主催‘05「中小企業経営診断シンポジューム」で、「携帯電話での出席管理システム」の導入事例を発表した論文で、中小企業庁長官賞(最優秀賞)受賞

出欠確認の教育効果 最終回

2008/07/24

<連載第6回目最終回>
出欠確認を実施して教育効果を引き出すための実作業

 出欠確認の手段を携帯電話にしても、それだけでは効果はない。実際に、携帯電話を活用して出欠確認を行い、その結果を引き出すための具体的な実作業を解説し、この連載の最終回とする。

1.学生に知識をつけさせること、その補完を目的にする
 実際にシステムを導入し、教職員の協力を得て多くの授業で出欠確認を実施するためには、目的が重要である。学生のため、彼らの勉強のためであれば、賛同者も多いはずである。大学関係者であれば誰もが否定できない・反対できない目的である。それ以外の目的であれば、否定も反対もできる。例えば、教員の出欠確認作業の省力化は学生のための目的ではない。出欠確認作業によって無駄にしていた授業時間を、IT化で取り戻すことなら学生のための目的である。
学生に知識をつけさせることが、大学教育の目的である。この目的を補完し、学生を4年間遅刻せず、休まず授業に出席させることを出欠確認の目的とする。

2.テスト
 議論することは、山のようにあるかもしれないが、先ずはテストしてみることである。その組織が選択したシステムをテスト導入して使ってみる。そうすればそれによる問題点や課題などが浮き彫りになる。その結果を踏まえて、学生のために使えるかを検討する。

3.加点主義での推進
 どれだけ議論しても、目的である学生に知識をつけさせることを100%達成する方法などあるはずがない。全学生に完全な知識をつけさせることなど不可能である。少しぐらい問題が残っても、デ・メリットがあっても、トータルでプラスなら進めるべきである。減点主義ではなく、加点主義で進めるべきである。

4.有志での取り組み
 最初から全授業で実施することを目標にせず、有志の教員ができる範囲で取り組むのがよい。出欠確認は簡単な作業であるが、その方法を変えるのはやはり抵抗感があり、時間もかかるものである。従って、最初は無理をせず、取り組みに賛同する教員で実施する。

5.学内広報
 テスト導入や有志での取り組みを随時学内で広報し、参加者を増やす。出欠確認が簡単に、短時間で、正確に(ズルを防止して)行えることが分かれば、必ず多くの教員が賛同・協力してくれるはずである。それでも反対すれば、反対行為が学生の不利益になるからである。より多くの授業で授業の開始と同時に出欠確認を行うことが、学生の出席を促し、それが学生のためになることは明らかである。

6.正しい取り組みと支援体制の整備
 このシステムは、①教員が学生に番号を指示し、同時に出席登録ボタンを押させることと、②教員が授業終了後にパソコンでボタンをワンクリックするだけで正確に出欠確認ができるように作っている。しかし、それすら実施されないことがある。このような使い方であれば、友人の出席を代理で登録するケース(俗に言う代返)が増えてしまう。これでは何の効果も引き出せない。
システムを正しく使ってもらうためには、それを支援する体制が重要である。特に教員が初めてこのシステムを使うときは、出欠確認の方法やパソコンの操作方法などを時間を惜しまず、丁寧に、何度でも説明し、システムを正しく使うように導くことで、出欠確認の効果を最大限引き出すことができる。

 ここに上げた内容は、多くのシステムに共通することであり、これから出欠確認へ取り組む方々への一助となれば幸いである。また、大阪成蹊大学でも後期からこのシステムをテスト導入することになっている。興味がある方々は是非、見学に来ていただきたい。

 

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