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第30号(平成28年4月30日発行)映画監督 是枝裕和さん

2016/05/10


40年も続く卒業後の社会人生活
だからこそ、“好き”を“仕事”にしたい!!

映画監督 是枝裕和さん

















  映画「海街diary」(2015年公開)が、日本アカデミー賞の「最優秀作品賞」に選ばれただけではなく、自身も「最優秀監督賞」を受賞するなど、日本を代表する名映画監督として知られるのが是枝裕和さんです。
 
  5月21日からは、原案・監督・脚本・編集を務めた映画「海よりもまだ深く」の公開を控えるなど、さらに大きな注目を集めています。
  クランクアップした是枝監督を訪ね、同作の見どころはもちろん、ご自身のこれまでを振り返っていただき、高校生のみなさんに応援メッセージをいただきました。


バレーボールに没頭の中学・高校時代
1年間の浪人を経て、早稲田大学へ

  忘れもしない1972年、ドイツで行われたミュンヘンオリンピックの男子バレーボール日本代表の金メダル獲得に感動し、その影響から、中学・高校時代はバレーボール部で青春を謳歌していました。

 当時はそのオリンピックの影響もあって、バレーボールに対する人気は高く、部員数も多かったですね。ちなみに当時のポジションはセッター。もともと身長が低かったので、バレーボールをやれば伸びるのではないかという思惑もあって入部しましたが、セッターになってしまいました(笑)。

 部活動引退後は大学進学を果たすべく受験をしましたが、残念ながら一浪しました。早い段階から私立文系に絞っていましたので、国語、日本史、英語の3教科を勉強していました。特に国語は予備校の先生の教え方が非常に分かりやすく、国語の成績は安定しました。

 その甲斐もあって、1年間の浪人生活後、早稲田大学(東京都新宿区)の第一文学部(現在は「文化構想学部」「文学部」に改編)の文芸学科に入学することができました。


自由を謳歌した大学時代
卒業後はテレビ番組の制作会社へ

  大学時代はお世辞にもまじめな学生とは言えず、レポートを提出さえすれば単位が取れるような授業を積極的に履修していました。

 高校時代はバレーボール部の部長を務めていたこともあり、よく後輩たちを指導しに母校に行っていましたね。また、映画が大好きでしたので、貪るように毎日観ていました。1日平均3〜4本は平気で観ていて、その頃から映画監督という仕事に憧れを抱き始めました。
 しかし、大学時代は自由を謳歌し過ぎたため、1年間の留年も経験。大学5年目の時は授業がびっしりと埋まっていながらも、同時並行で就職活動も行っていました。

 そして、無事に就職先も決まり、卒業後はテレビ番組の制作会社・株式会社テレビマンユニオン(本社東京・渋谷区)に入社。テレビ番組のADをしながらドキュメンタリー番組の演出家も務め、1995年に「幻の光」という作品で映画監督デビューを果たしました。
 その後も、幸運にも数々の映画の監督を務めさせていただき、現在に至ります。


名優・阿部寛主演の自信作
「海よりもまだ深く」が公開

  原案・監督・脚本・編集を一手に務めた映画「海よりもまだ深く」が公開されます。

 俳優の阿部寛さんが主演し、樹木希林さん、真木よう子さん、リリー・フランキーさん、池松壮亮さんなど、演技派キャストで脇を固めた家族の映画です。いくつになっても大人になり切れない男・良多(阿部寛)と、そんな息子を深い愛で包み込む母・淑子(樹木希林) の姿を中心に、夢見た未来と少し違ういまを生きる家族を描く、心にしみる感動作に仕上がりました。私がこれまで50年以上生きてきた中で、息子として、夫として、父として考えたことや感じたことをギュッと詰め込んだ作品です。ぜひ劇場に足を運んでご覧いただきたいと思います。


ゆとりのある学生時代を
有意義に過ごして欲しい

  私は幸運にも、というか、たまたま好きなことを仕事にすることができました。そのことは両親や大学にとても感謝しています。ただ、みんながそういう仕事に就けるわけじゃない。それでも大学時代に先のことを考えずに好きなことに没頭できた時間は大きな財産になっています。

  私がこうして映画監督を続けてこられたのも、映画が好きで学生時代に数え切れないほどの作品を観たことが大きいと思います。もちろん、当時は趣味としてでしたが、結果的にはその時に磨かれた感覚や積み重ねた経験がいまに活きているのだと思っています。ですから、人生の中でも特にゆとりのある学生時代を有意義に過ごして、みなさんの興味のあることに情熱を注いでもらいたいですね。


これえだ・ひろかず●

1962 年6 月6 日生まれ、東京都出身。早稲田大学第一文学部文芸学科卒業。95 年、「幻の光」で映画監督デビュー。その後も「誰も知らない」「そして父になる」など、日本を代表する名画を手がける。2015 年公開の「海街diary」で第39 回日本アカデミー賞「最優秀作品賞」。幅広い層からの支持を集める、いま最も注目を集める映画監督の一人。

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