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173号

2019/11/18

 自然の脅威が印象に残る10月が過ぎ去った。朝晩の冷え込みが厳しいが、澄んだ空気に季節の移ろいを感じるという人も多いだろう。サンマや焼き芋など、秋の味覚の豊かな香りもより一層引き立つようだ▼先日、平安時代に紫式部が書いた『源氏物語』の最古の写本が見つかったというニュースが巷を騒がせた。発見されたのは、光源氏がのちに妻となる紫の上に出会う重要なシーンが描かれた「若紫」の巻で、鎌倉時代の歌人・藤原定家が書き写した非常に歴史的資料価値の高いものだという▼日本を代表する古典文学として知られる『源氏物語』だが、貴族の男女による恋愛を中心に展開するストーリーに、はじめは戸惑う人も少なくないと聞く。確かに、現代社会に生きる私たちの視点に立つと、登場人物のものの考え方や習俗など不思議に映る部分があるかもしれない▼しかし、これは逆の見方に立てば、古典作品を読めば現代を相対化する視点が得られるということだ。何百年を経ても国内外に多くのファンを持つこの古典には、いつの世にあっても人を惹きつける普遍的な魅力があるに違いない。高校生には「食わず嫌い」になることなく、秋の夜長にぜひ挑んで欲しい名著だ。

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