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第82回 東北学院大学 第6代学長 大西晴樹氏

2019/11/18


東北の学都・仙台で有為な人材を育成
東北学院大学 第6代学長 大西晴樹氏




 文・経済・経営・法・工・教養の6学部・16学科を構え、東北エリア屈指の多様な教育で多くの卒業生を輩出してきた東北学院大学(仙台市)。
 今春4月、新学長に就任した大西晴樹氏を訪ね、学びの特徴や今後のビジョン、新キャンパスの設置計画などについてお話をうかがった。






令和5年4月、仙台都心部に
五橋新キャンパス誕生
――現在「アーバンキャンパス計画」を進めているとうかがっています。
 東北学院大学は令和5年4月、仙台市の都心部である五橋地区に新しく「五橋キャンパス」を設置する予定です。約1万7000平方㍍ほどの規模で、ホール棟・講義棟・高層棟・研究棟の四つの建物を設置します。高層棟は16階建てのかなり大きな建物ですから、完成したら新幹線で仙台を訪れる方々からもよく見えるものになるはずです。
 本学にはメインである土樋キャンパス(仙台市)のほか、教養学部が修学している泉キャンパス(同)と、工学部の学生が学んでいる多賀城キャンパス(宮城県多賀城市)がありますが、五橋キャンパスの完成後には、泉キャンパスと多賀城キャンパスの学生は五橋キャンパスに集約されます。
 伝統ある土樋キャンパスと五橋キャンパスが一体となり、およそ1万1000人の学生が集まるという構想です。学生や教職員をはじめ、さまざまな交流を生み出すと共に、仙台における交流拠点として、市民により開かれたアーバン(都市型)キャンパスならではの展開が見込まれます。

――「市民により開かれたキャンパス」の具体的なイメージをお聞かせください。
 高層棟の1階に「未来の扉センター」(仮称)を設置し、そこで本学の基本方針でもある地域貢献・社会貢献に取り組んでいきます。
 また、カフェスペースを地域のみなさんが気がねなくご利用できるように開放し、お食事はもちろん、講演会や演奏会に足を運んでいただけるようにしていきます。
 ほかにも、学生がお年寄りにスマートフォンの使い方をお教えしたり、こども食堂を開いて子どもと交流したりと、地域の潜在的なニーズに応えることで、大学としての役割を果たしていきます。

――新キャンパスの誕生で、どのような変化を期待されていらっしゃいますか?
 多くのメリットがあると思います。まず、文系と理系の学生が一つのキャンパスで学ぶことで、文理融合によるシナジー効果が期待されます。
 工学部の学生が法学部の授業で環境法を学んだり、経済学部の学生が工学部のデータサイエンスに関する授業を受けたりという交流は、これまで以上に教育の質を高めることにつながるでしょう。
 また、通学が便利になることも利点の一つです。新キャンパスは仙台駅から徒歩15分程度、地下鉄五橋駅からは地下コンコース階と直結するためアクセスが非常に良く、通学範囲が広がるはずです。学生が集まる街になりますから、今後サブカルチャーなども発展していく可能性も高まるでしょう。
 加えて、仙台駅周辺は夜でも人通りがあって明るく、遅くまで公共交通機関も稼働しているため、遅い時間まで勉強しても帰りが安心です。社会人の学び直しなどにも便利な環境を提供できます。


教養教育を重視した
新しい学びの展望
――4年間の学びでどのような人材を育成しますか?
 学生たちはおとなしくてまじめです。そこに東北人の粘り強さのようなものを備えていますから、学ぶ力は強いと思います。
 本学はいまから133年前に、米国から来日した宣教師によって建てられたキリスト教による人格教育を基礎とする大学です。3年前の創立130周年の際に、伝統ある人格教育の継続・発展について「ゆたかに学び地域へ世界へ」というモットーを全学共通の目標として掲げ、卒業生が広く活躍するための豊かな学びを提供することを目指すようにしました。声優や歌手、俳優として輝いているOB・OGも多くいらっしゃいますし、成績や記録だけにこだわるのではなく、人としての非常に深いレベルでの成長を目指してきた大学だと自負しています。今後もそれをさらに発展させていきます。

――英語教育にも非常に力を入れていらっしゃいます。
 キリスト教のミッションスクールが由来の大学ですから、英語教育は本学が非常に得意するところです。
 入学直後に実施するオリエンテーションの初日に、全学部の新入生に「TOEIC Bridge®Test」を受験してスコアによって5段階にグレード分けし、学力レベルに応じた英語の授業を1年間行います。読み・書き能力、リテラシーを高めることで、英語だけではなく、すべての言語に共通する「文章を理解する力」の底上げを十分に果たしてきたつもりです。

――今後のビジョンについてお聞かせください。
 本年4月、学長に就任した際、私から教職員に対して、「教養教育」「新設学部」「国際教育」、そして「IT・図書館」に関する四つの諮問を行いました。これらに対する答申をもとに、東北学院大をより良くするべく改革を進めていきます。
 最初の教養教育については、本学が特に大切にしてきた部分です。これまでは教養学部のある泉キャンパスが拠点でしたが、新キャンパスが完成すれば全員が一体となって学ぶわけですから、すべての学生に教養教育をしっかり身につけさせることを継続して、さらに強化していかなければいけないということを念頭に置いています。
 次の新設学部についてはまだ構想段階であって詳しくは申し上げられませんが、21世紀に相応しい教育の仕組みを作るのが私たちの仕事ですから、前向きに取り組んでいきたいという想いはあります。そして、これは国際教育とも関連しますが、地域・情報・国際といった、現代社会において日本、そして世界が必要とすることに応えていくつもりです。
 最後のIT・図書館については、いわゆるアクティブ・ラーニングでの活用を期待しています。最近では大学の授業も多様化しており、教員が黒板に書いた内容をノートに取るという形式の授業はかなり減って、能動的学習が主流になってきました。
 本学では、授業のICT化に対応し地域に開かれた建物として平成28年に完成した「ホーイ記念館」という建物があります。地域との接点を持ちながら、学生がディスカッションをしてそれを専門家に聞けるような仕組みを整えていますし、新キャンパスにはさらに1・5倍くらいの規模のものをまた作りますから、アクティブ・ラーニングも教育力の一つとして、非常に大きな効果をもたらすものとして期待しています。


新時代のニーズに応える教育
専門的な学びの実現を約束
――高校教員に対する要望があれば教えてください。
 大学入試で英語の4技能が重視されるようになったり、今後高校における「情報」の授業が必修化および内容の大幅な充実を予定していたりと、社会は変化し時代は急いでいます。本学ではそうしたダイナミズムに応え得る教育改革に邁進して参りますので、優れた生徒のみなさんを送り出していただければと思います。
 仮に東京に行かなくても、仙台で充実した設備と内容を兼ね備えた学部・学科があることをお伝えください。

――高校生に向けてメッセージをお願いします。
 規模が相対的に大きい総合大学ですから、文系・理系を問わずいろいろな学部があり、幅広い内容を学べるというのはそれだけで大学選びにおける一つの判断基準になるのではないでしょうか。
 また、キリスト教による人格教育を基礎としていますので、人間を深く洞察する視点の獲得が期待できるでしょう。これからの情報化社会において、データに振り回されるのではなく、自分でそれを読み解いていく力は非常に重要になりますし、それを身につけるのはやはり教養教育だと思います。本学ではそれができます。
 令和5年にキャンパスを移転いたしますので、今年度の受験生が大学4年生になる頃にはすべての学生が土樋と五橋で学ぶことになります。
 より多くの学生が一カ所に集まり大学生活を送ることによって、仙台の街にも、例えば古着屋だったり、おしゃれな喫茶店だったりという、学生向けの店が増えていくではないかということも考えられるのではないでしょうか。
 また、4年生のゼミナールや卒業論文などは、新キャンパスの設備を活用することが可能ですし、キャンパスが近くなるため通学の範囲は広がるということも念頭に置いていただければと思います。
 教養教育と人間的洞察力、そして専門的な学びの実現をお約束します。


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