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第7回 進みつつある大学入試のICT化
2019/12/26
連載 入試研究からみた大学入試
第7回 進みつつある大学入試のICT化
西郡大
まず、書類審査の電子化の主なメリットを3点挙げる。1点目は、事務作業の効率化による評価期間の短縮だ。書類の電子化によって、各書類への受験番号の印字や関連資料の整理、採点者人数分のコピーといった事前の事務作業が不要となり、評価期間の短い入試においても書類審査を導入しやすくなる。
2点目は、効率的な採点作業および評価精度の向上だ。申請情報が電子化されるとはいえ、自動採点は現状では難しく、採点者がパソコンの画面上で情報を確認しながら評価することになる。ただし、効率的に採点を行うための画面表示、条件指定による受験者や申請書の抽出・並び替えといった紙ではできない処理により、採点作業は格段に効率化を図れる。また、各採点者の得点分布をリアルタイムで把握し、必要に応じて評価作業を修正するなど、評価の精度を高めることも可能だ。
3点目は、受験者にとってアピールできる材料の広がりだ。従来の書類審査であれば、書類の枚数制限を行わざるを得ないが、申請情報の電子化により、ドキュメントだけでなく写真、動画、音声、eポートフォリオ等の提出が可能となる。評価する大学にとっても従来以上の情報を得られることになり、豊富な情報をもとにていねいな評価をしたいと考える募集単位にとっては有効な仕組みとなるだろう。面接試験などと組み合わせれば、より掘り下げた評価も可能となる。
ところで、主体性評価というと「eポートフォリオ」の導入が前提という認識が一部にあるようだが、それは必ずしも適切ではない。ポートフォリオは生徒による学習と活動の履歴や振り返りと共に、それらを活用した教育的指導があってはじめて効果を発揮する。単に入試に向けた材料蓄積のツールとして利用するのであれば、eポートフォリオである必要はない。
大学入試にはICT化の波が押し寄せている。調査書の電子化が本稼働すれば、この流れはより加速するだろう。そうすることで新たに生じる課題もあるだろうが、まずは新しく何ができるかを建設的に考えることが大切だ。例えば、レポートや論文の剽窃をチェックできる仕組みを利用すれば、人の目では気づかなかった視点から評価ができるかもしれない。また、入学後のパフォーマンスや学業成果を示す指標と組み合わせた分析が容易となり、入試制度の効果検証も充実する。そもそも「多面的・総合的な評価」とは、受験生に関する多様で豊富な情報を多角的に評価することだ。人間の情報処理能力には限界がある。ICTを活用することで多面的・総合的な評価をどのように支援できるのか。入試研究の新しい課題と言える。
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