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第83回 ハリウッド大学院大学 学長 山中 祥弘氏

2020/04/16

キャリアデザインを鮮やかに描き、一流を目指す
ハリウッド大学院大学 学長 山中 祥弘氏

 ハリウッド大学院大学(東京都港区)を設置する学校法人メイ・ウシヤマ学園(同)は、ハリウッド美容専門学校(同)も併設し、今年で創立95年を迎える。同法人は、ビューティビジネスにおける経営者教育の専門職大学院と技能者教育の専門学校の6年間専門職教育一貫体制を
誇っている。ビューティビジネスの「理論と実践の有機的結合」により、人を美しく幸福に導く一流のビューティビジネス人材を育成することを教育方針としている。
 山中祥弘大学院学長にビューティビジネスの動向やキャリアデザインについて話をうかがった。

キャリア教育で夢を実現
専門職大学院で起業家精神を醸成

高度化・多様化する
ビューティビジネス

――近年の美容業界の動向についてお聞かせください。
 美容業界は典型的な人的サービス産業です。美容業はこれまでのヘア中心からネイルアートやメイクアップ、そしてエステティックというように、ビューティビジネス自体が高度化する流れの中で分野が多様化してきました。
 美容業というのは容姿美だけではなく、精神美、健康美、服飾美、生活美、そして環境美まで含めたトータルビューティとなります。美容師法で定める美容とは「容姿を美しくする」ことですが、これは最も狭い意味の概念に過ぎません。美容業界の全体的な動向としてヘア市場だけを見れば、それほど大きな変化はありませんが、それぞれを専門分化したものを総合してみれば、美容業界のマーケットサイズが非常に大きくなってきているのが分かります。
 ヘア業界では特に、個人営業や時代性にマッチしない美容室の閉店が増加しています。それには主に二つの理由があります。一つは技術をはじめとするさまざまな面で時代の変化についていけないということ。
 そしてもう一つは、経営の問題です。技術者の人材不足で年々給与が上がり、採用能力のない企業は閉店してしまうという実態があります。しかし、新規店はそれ以上に増えている。経営的に優れている美容室はもちろん、最先端を行く先進的な技術を持っている美容室はフランチャイズチェーンとして増えてきています。この現象はサービス業全般も同様です。
 そしてさらに一つ、急激に進展する高齢化の波が美容業界に大きく影響をおよぼしています。美容には医療的な効果があり、これをメディカルビューティと言います。美容は高齢者に生きがいを与え、健康の増進にも寄与します。本学園の学生は老人ホームにネイルアートなどのボランティアに行きますが、利用者のみなさんはそれを心待ちにしてくれています。
 美容人口は15歳から65歳までといわれていますが、現代は、小学生から化粧に興味を持ち始めています。そういう意味で、人口は減少しているものの、全世代に対応できる美容ビジネスが求められており、現に美容師の活躍分野が非常に広がってきているのです。
 ただ、長寿社会においては医療と健康とファッションといった周辺領域との連携が必要です。日本は美容とファッションの連携が弱いのですが、ヨーロッパやアメリカは美容とファッションは一体的になっています。パリ・コレクションやニューヨーク、ロンドンのコレクションでは、美容師がいなければファッションショーは開くことすらできません。
 また、健康美という面ではメディカルビューティの時代が到来していますが、非常に高度化かつ専門化傾向にあるというのは事実です。
 このようにして、トータルビューティという概念は社会の発展と共に無限に広がっていくと言えるでしょう。

「就社」の大学と
「就職」の専門学校

――キャリアデザインの描き方についてお聞かせください。
 キャリアデザインに重要なのは職業適性です。職業適性を育てるには、何になりたいか、何に興味を持っているのかが大切です。美容が好きな人には美容の適性が育ちます。美容が好きという人には二つの動機があります。「自分がキレイになりたい」ということと、さらに「人をキレイにしたい」ということです。「自分がキレイになりたい」はスタートであり、それが高じるとほかの人までキレイにしてあげたくなるのです。ここで美容師としての職業適性が育ちます。
 幼稚園児や保育園児、小学生の将来の夢に関するランキングを見ると、男子はサッカー選手、野球選手、学者など、女子で多いのはレストラン、保育園や幼稚園の先生、看護師ですが、それ以外では美容関係が常にベストテンに挙がっています。将来の夢を子どもたちはしっかりと持っているのです。
 さらに例を挙げると高校生男子に人気があるのは公務員や教師、医師など、女子は看護師、教師、保育士、美容関係などです。共通しているのは、どの世代も専門的な職業に憧れを抱く者が多いということです。
 一方、高校生の保護者にアンケートを取ると、公務員のような安定した職業が圧倒的に人気を集めています。もしくは医師、看護師、教師などの専門職です。目指す職業によって専門学校に進学するか、大学に進学するかが決まります。
 しかし、保護者が期待する職業と、高校生が就きたい職業は異なっていることもあります。「給与が低い」「長時間働かなくてはならない」「社会的評価が低い」といったネガティブな間違った情報によってあきらめる人が非常に多いのは残念です。美容師志望の人であっても、大学に行くと、美容師を目指すことよりも、どこの会社に入社しようかという意識に変わってしまいます。いわゆる職業を選ぶ「就職」と、会社を選ぶ「就社」との混同が問題です。
 誰もが幼稚園児や保育園児の時代から、キャリアデザインはイメージとして強く描き出されています。しかし残念なのは、年齢を重ねるうちにその熱意が消えてしまっていくことです。特に高校の進路指導はどこの大学に行くのかということが中心で、目指している職業に就くには何を学び、どうしたらいいのかという指導があまり行われていません。
 このように、目的と手段の混同がいまの日本の教育における最大の問題でしょう。大学と専門学校の学校選択をする前に、その職業に就くためのプログラムを考える必要があります。目的は最初から持っているのですから、それを実現するための方法を考えるということが本来のキャリアデザインと言えるのではないでしょうか。
 また、先述のように「就職」と「就社」の混同が進路指導を混乱させています。「就社」は企業を選んで入社すること。大学や短期大学に進学して総合職という「ゼネラリスト」を目指すのが就社です。
 一方、専門学校や専門職大学院に進み、専門職という「スペシャリスト」を目指すのは「就職」です。ここで注目したいのは、スペシャリストはゼネラリストになることができるということです。専門職から経営者になる人は大勢います。しかしゼネラリストはスペシャリストにはなかなかなれません。医師は経営者になれますが、経営者は医師にはなれません。その意味では専門職人材は将来の活躍の分野が広いと言えるでしょう。
 専門学校には社会人も多く在籍し、実社会に出てから学び直しをしている人たちもたくさんいます。本学園では、卒業後の就職を目的とした「キャリアゲット」、実務能力を高める「キャリアアップ」、休職後の復帰を目指す「キャリアリフレッシュ」、新しい成長分野へ進出するための「キャリアチェンジ」といった生涯キャリア教育に取り組んでいます。
 ⅠT化によって消えていく可能性が高い職業もありますし、最近では政府も社会人による学び直しを提唱しています。これまでは「通過型教育」で卒業後に専門学校・大学等に戻り、学び直す人はほとんどいませんでしたが、今後は急激に変化する社会に対応するために、再び専門学校・大学等に戻って知識や技術を学ぶ「循環型教育」が浸透していくのではないでしょうか。

専門職に求められる
理論と技能、経営能力

――起業を意識している若者が増えてきているようです。
 独立または起業志向の多いサービス産業従事者に求められる能力は経営力です。経営者には知識や技能、そして仕事に対する態度、姿勢が重要です。知識というのは理論であり、実践的な技術のことを技能と言います。仕事に対する態度や姿勢というのは自己管理能力のことです。職場において、自己目的を達成するためには仕事をセルフマネジメントをするということが重要です。そのためには、企業経営の理論と実践の能力が創業者には不可欠です。こうした能力を育てるのが実践的な教育なのです。
 例えば美容師として独立をするには、免許を取って社員となるところからスタートします。その後、独立するまでには多くのステップがあります。美容室に入職すると、固定給の段階、中堅社員になり固定給にプラスして歩合がつく段階、そして店長クラスになり店舗の業績が給与に反映される段階に分けられます。独立するにもレンタルブースと言って美容室の一つのスペースを借りるほか、廃業を考えている人の店舗を借りてお客さんも設備もそのままに経営するレンタルサロンという形もあります。
 さらに、フランチャイズチェーンやボランタリーチェーンという道もあります。将来はそのようにして自分のブランドを確立し、チェーン展開をしていきます。この過程を計画的に進めていくことで、目指している夢の実現へとつながっていきます。
 それでは、これにどのような能力が必要かと言えば、専門職の理論とそれを実践する技能、そして経営力です。経営学を簡単に言うと、目的を達成するためのプログラムのことです。目的とは何のためにするかということ、プログラムはそれを実行するための計画です。その基本となっているのが自己管理です。自己管理ができない人は経営者にはなれません。言われたことしかやらない人は経営者ではなく単なる機械に過ぎないのです。仕事をより一層効率化できないかを考え、工夫・改善し実行することこそが経営管理なのです。
 本学は、ビューティビジネス教育のパイオニアとして、大正時代からの成果とその高度な教育システムの基盤に立って専門職業人として不可欠な専門能力を修得させ、経営者・管理者・指導者を育成することを目指しています。そして、美容室やエステティックサロン、ネイルサロン、化粧品店等ビューティビジネスの経営者、管理者、後継者になるための高度な経営の専門知識を授けるほか、ベンチャー・スピリット旺盛な社会人が新たなビジネスチャンスに挑戦するために必要な経営戦略やマーケティング、人材開発などの高度な知識・スキルを提供します。一流の経営者、社会貢献型の企業経営を目標に学ぶことができるでしょう。

「学力」の大学と
「職業適性」の専門学校

――高校生が身につけておくべき知識や素養を挙げてください。
 考え抜く力、チームで働く力、前に踏み出す力という三つの社会人基礎力を経済産業省は提案していますが、これを高校時代から身につけておくのも大切でしょう。さらに、大学進学者には学力が必要であり、専門学校に進む人に職業適性が必要です。大学の目的は研究ですから、学力が選考基準です。基礎的な学力は中学修了段階の義務教育で十分身についていますが、高校から先は自ら勉強するものです。大学は自分で科目を選択して履修プログラムを作成します。そのため自ら学ぶ要素がとても強いと言えます。自ら学ぶことが社会人基礎力の醸成につながります。
 一方、専門学校の場合は、職業適性が選考基準です。ですから、専門職を目指す場合、身につけておくべきことは目指す職業の情報です。例えば美容なら、映画やテレビを見ていても、あるいは街を歩いていても美容の情報が自然と入ってきます。それが職業適性として蓄積していきます。ですから興味を持つということは、その人の職業適性を育てるための情報収集能力を磨くことに直結します。つまり身につけておくべきことというのは、自分の興味を中心にその専門分野の知識や情報を持つということにほかなりません。入試においても専門学校は職業適性を見るためにAO入試を行ってきました。どのように測るかといえば、まずは興味があるかどうか、そしてその情報をどれだけ持っているのかということです。
 私たち美容専門校が見る職業適性の判断とは、美容情報を入学前にどれだけ持っているかということです。どのようなヘアスタイルが流行しているのか、メイクアップはどうか、どういう女優のヘアが好きなのか。そういうことを答えられない人は美容師にはなれません。ですから、高校時代までに身につけておくことが望ましいのは、大学ならその専門分野に進むために必要な学力、専門学校ならその分野に必要な職業適性ということになるのです。

目標が高いほど
成功する可能性が高い

――大学・短期大学・専門学校への進学を考える高校生にメッセージをお願いします。
 高校生のみなさんに伝えたいのは、自分の目的を達成するために必要な知識、技術、そして実践力の基礎を身につけて欲しいということです。
 興味がある人は自ら学びます。ある美容室グループは幼稚園児・小学生向けのジュニアビューティスクールに取り組んでいます。子どもたちは、勉強したいから放っておいても真似をします。興味があるからこそ真似から始めるのです。それと同じことです。自分の興味のあることから始めましょう。
 イノベーションという言葉がありますが、日本にこの言葉が入って来た時、これは「創造的破壊」と翻訳されました。創造的破壊とは、良いものは残しながら、新しいものにクリエイティブしていくということです。そういう能力を身につけて欲しいのです。
 目標はできるだけ高いほうが好ましい。目標を明確にすることで、人は情報収集を始めたり、専門書を読んだりします。目標が高ければ高いほど、成功する可能性は高いということなのです。これはできそうだな、と思えることは、他者も同じように考えるため競争相手が非常に多い。だから人があきらめるような高い目標を持てば、実現の可能性が大きくなるというわけです。技術でも何でも競争を勝ち抜きナンバーワンを目指す。次に自分にしかないものを持つオンリーワンとなる。そして人から選ばれるセレクトワンになっていくのです。一緒に一流を目指して頑張りましょう。

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