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189号

2021/03/19

 自宅近くの公園に植わった紅白の梅の木が、競うようにその花を咲かせている。朝晩の冷え込みはまだ厳しいが、桜よりひと足早い梅の開花に春の訪れが近いことを感じる▼学問の神様として有名な菅原道真が歌った和歌に「東風吹かば匂ひおこせよ梅の花あるじなしとて春な忘れそ」がある。これは、平安時代に政治家として手腕を発揮し、右大臣にまで登りつめた道真が、政敵の策略によって大宰府へ左遷されることが決まり、庭の梅の木に対して詠んだ歌だ▼翻って現代では、新型コロナウイルス感染症の感染の広がりを抑えるために自宅で過ごす時間が増え、ともすれば季節の移ろいを感じる瞬間を蔑ろにしてしまいがちだ。ただ、人間の営みがどうであろうとも、自然はいつもと同じ美しい風景を見せてくれる。菅原道真も、そうした偉大な自然と卑小な存在である自分自身を比べながら、この歌を詠んだのではないだろうか▼3月に入り、受験シーズンもいよいよ佳境を迎えている。志望校に合格した人はもちろん、そうではない人も、受験に向けて積み重ねてきた努力は今後の糧となるはずだ。新しい生活や目標に向けて、力強く第一歩を踏み出して欲しい。



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