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第86回 淑徳大学 第12代学長 山口 光治氏

2021/05/14

学生の主体的な学びを「チーム淑徳」で支える利他共生の精神
淑徳大学 第12代学長 山口 光治氏




 淑徳大学(千葉市)は、「利他共生」を建学の精神に掲げている。他者に生かされ、他者を生かし、共に生きる中で、一人ひとりが自律する理想社会の実現とそれを担う人材育成に傾注している。
 令和3年4月、淑徳大学の第12代学長に就任した山口光治学長に、同大の独自の教育と今後目指すビジョンについてお話をうかがった。






地域や外部との連携を強化 「実学」を重視した学び
――学長就任に際し、現在の心境をお聞かせください。
 卒業生が学長に就任するのは、本学としては今回が初めてということもあり、その責任の大きさを感じているところです。私自身、卒業後は福祉職として社会人生活を送ってきましたが、その間も卒業生として母校を見つめてきました。不思議なもので、卒業してからのほうが、大学の理念や目指すものなどといったある意味“淑徳らしさ”というものを感じ取るようになったと思います。そうした背景や流れの中でご縁があって母校で教鞭を執ることとなりました。
 学生のみなさんには、“淑徳大学だからこその学び”に大いにふれていただき、ご自身の誇りや自信につなげていただくことを期待しています。本学が実践する学びの魅力や外部から見た本学の姿を意識しながら、今度は学長という立場から大学運営に取り組み、より具体的なアクションを起こしていきたいと考えています。

――貴学の学びの特徴を教えてください。
 本学の学びの基盤にあるのは「仏教思想」です。ご注意いただきたいのは、一面的に宗教を信仰するのではなく、教育のベースとなる思想ということです。仏教思想である「利他共生」や「感恩奉仕」などの言葉の意味について、大学学部4年間あるいは短期大学部2年間の学びを通して実感し、自分たちの人間的な成長につなげて欲しいと思います。 
 これらを直接体感する機会として、本学では入学式や卒業式、降誕会などの学内行事を通して、法要の意味や本学のルーツを伝えています。いわゆる「自校教育」の枠組みにおいて、学祖の思い入れや自らが籍を置く大学の歴史を知る中で、自分がそれまで生きてきた中で多くの人の助けを得て成長してきたことを自覚し、今度はそのことに気づいたその学生自身が誰かの助けとなる存在となってくれれば嬉しく思います。
 本学では、福祉学や看護学、経営学などの専門性が高い教育を行っていますが、忘れてはいけないのは、そうした学びの土台には先ほどふれたような建学の精神や教育の理念があるということなのです。学生にも、こうした本学の教育の在り方を改めて認識してもらうため、4月には学長講話として「淑徳大学で学ぶ意義」を説いています。それを理解することが学びに対するモチベーションの向上につながるでしょう。
 実践を通して気づきや学びを得る「実学教育」は学祖・長谷川良信先生が大切にされていたことで、いまもなお本学が重視する教育の構えです。ボランティア活動や自ら課題を発見し解決するPBL(問題解決型学習)など、現場に根ざした学びが人間的な成長を促します。これは、今後も本学が大切にしていきたい学びの形の一つです。

――「実学教育」を重視する貴学ならではの取り組みを教えてください。 
 東日本大震災をはじめとする災害に対するボランティアに細く長く取り組んでいます。本年は、震災の発生から10年間という節目の年でもあり、今年新たに「TOMOIKI企画」を発足させました。ボランティア活動は本学が掲げる建学の精神の行動化の象徴です。東日本大震災以外に、房総の台風や長野県・千曲川の決壊の現場に学生と共に足を運ぶなど、とにかく行動に移してきました。学祖自身、災害が起きたらまずは行動に移す人物だったと伝わっています。学祖の思い入れが現代の学生にも受け継がれているようでとても嬉しく思います。

――フィールドワークの機会や外部との接触機会を多数設けていらっしゃいます。
 淑徳大学ならではの実学教育として学祖が掲げたのが、「実証精神」「実践志向」「自己実現」というものです。学祖は、実践思考の持ち主でした。知識を身につけてから現場に赴くということも大切ではありますが、困っている人たちに対していまの自分は何ができるのか、それを考えることがまずは大切なのではないでしょうか。その場に身を置くことでしか感じることができない知見を受けて、行動に移すことができる人材を育成するというのが本学の目指すところです。現場に立つ大切さを知ることが、結果的に自己実現につながっていくのだと思います。
 具体的な取り組みとして、社会福祉学科では、1年次から現場実習を取り入れています。社会福祉に関するさまざまな実践的知識と技術を身につけていきます。こども教育学科では、小学校で学習支援のボランティアを行うことで、現場の実態や状況を理解した上で教員を目指すことができるでしょう。こうしたフィールドワークの機会を学びのモチベーションにつなげていきます。

――近年、注力されている取り組みはありますか。
 本学はこれまで、地域社会やさまざまな機関などとのつながりを持った取り組みに注力してきました。この構えは、私自身の考え方や方針とも一致しています。高校との連携には力を入れていますし、キャリア教育の場面では、これまで埼玉労働局と協働で多様な取り組みを行ってきました。つながりという意味で、これからの時代は、大学だけが単独で頑張るという時代ではないと言えるでしょう。高大連携はもちろん、県教育委員会との連携を深めるなど、着実につながりを増やしているところです。そのフレームの中で、本学が持つ能力を引き出していただいたり、逆に頼れるところは頼ったりするなど、お互いを尊重するWin-winな関係で進めていきたいと思います。


独自の魅力を醸成 「感恩奉仕」が活きた教育
――今後のビジョンをお示しください。
 新生・淑徳大学として、引き続き、より良い大学教育の在り方を模索していきます。その上で、本学が掲げる建学の精神に基づく“淑徳大学ならでは”の教育・研究・社会貢献・大学運営等について「チーム淑徳」を推進していきます。教科・科目に限らず、教育活動全般において、建学の精神を支柱とする教育の強化を図っていきます。
 私が掲げる方針の一つに、「学生一人ひとりの支援」というものがあります。4年間あるいは2年間学んで、学生は社会人となっていくのですから、そういう社会を支える人材としての一人ひとりを大切にしたいのです。それは学業面に限らず、経済面でも同様です。個々の学生が抱える課題に対して、ていねいかつキメ細かな支援を進めることで学びの質が保証でき、学生自身が納得できる卒業後の進路決定を促進します。そのためには、学生だけに限らず、教職員にも淑徳大学の魅力を発信し、理解し協力してもらうことが大切です。淑徳大学で教えることの魅力、また淑徳大学で働く魅力を感じられる大学運営を目指していきます。
 現在ある「地域支援ボランティアセンター」は、本学の4キャンパスにおける近隣地域をはじめ、国内全体を視野に入れて、地域住民のみなさまのニーズに応えるべく動きを加速させていきます。ボランティア活動に注力する本学ならではの取り組みを強調すると共に、選ばれる大学として特殊性の構築を目指しています。

――IR(Institutional Research)やFD(Faculty Development)の強化にも努めていらっしゃいます。
 学生募集から学生教育、支援の質の向上などに向けて、IR機能の強化を図っています。本学では「IR推進室」を立ち上げて教育の評価の開発を行っています。具体的には、学内データの収集や分析、改善施策の立案、諸施策の実行・検証という流れを定着させていきます。
 大学の現状を知る機会として、定期的に本学の教職員を対象とする研修会を実施しています。大学教育向上委員会を発足し、「全学的に取り組むことが求められるテーマ・事項」の企画立案の支援、そのための調査研究および周知を図る活動を進めています。こうしたFDの活動によって、本学が目指す教育のビジョンが学内全体で共有につながるなど、組織的な教育力開発を推進しています。

――昨年は新型コロナウイルス感染症に揺れた一年でした。貴学の対応を振り返っていただけますか。
 新型コロナ禍において、対面授業が難しい状況が続きました。しかし、このことはまた、本学が建学の精神に掲げる「人間開発」「社会開発」は人と人との関わりが大切であることを再認識する機会ともなりました。
 「情報」や「知識」を伝えるのはICTを活用すればある程度はできるでしょう。例えば、Zoomを利用して現場で働く人と話をする機会を設けるといった対応を行いましたが、学生を連れて現場に出向くことができなかったのは残念でした。可能な限りの感染症対策を行いながら、やるべきことには取り組んでまいりました。その一環として、新たに「情報センター」を立ち上げ、学生あるいは教職員に情報ツールの使い方のアドバイスを行うという仕組みを整えました。ICT導入は容易ではありませんでしたが、いずれ新型コロナが収束した後も活用を継続し、より充実した教育を提供していくつもりです。 

――進路を模索する高校生にメッセージをお願いします。
 高校生のみなさんには、進学先を選ぶ上で大切なのは、そこで何が学べるのかを意識することであるとお伝えしたい。その意味では、やはり受け入れ側である大学側が独自性を広く伝えていく必要があるでしょう。
 例えば、看護師養成課程で学ぶ内容は決められていますから、カリキュラムの内容をそのまま教えるだけというのであれば、誰が教えてもいいはずです。しかし、大学教育はそのような一面的なものではありません。各大学が育成を目指す人物像や建学の精神などが投影された独自性こそが大切になってくるのです。大学の個性と言ってもいい。そうした大学の独自性や個性は教職員が身にまとうものなのだと考えています。
 人は一人では生きてはいません。だからこそ本学が大切にしているのは「誰かの助けになりたい」という気持ちで、それが「感恩奉仕」であり、自分自身の成長にもつながります。そして、人の役に立てるということは、まわりまわってやがて自分に返ってきます。そうした思考を持つ人は、ぜひ本学に一度足を運んでいただければ嬉しく思います。





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