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第3回 コロナ禍後のオンライン教育の可能性

2021/09/16

連載 2040年に向けての大学教育

第3回 コロナ禍後のオンライン教育の可能性

山田 礼子

 COVID-19の感染拡大は、世界中の高等教育の在り方に大きな影響を与えてきたが、多くの国々では、教職員・学生へのワクチン接種を進め、早急に対面式授業への復帰や拡大を目指している。日本でもこうした方向性は多くの大学で共有されている一方、オンライン授業と対面型の組み合わせも、ニューノーマル(新常態)な方向であるとの認識も広がっている。
 COVID-19のパンデミック(いわゆるコロナ禍)を契機に、世界中で高等教育段階でのオンライン教育は一気に広がり、大学教育の在り方にさまざまな可能性と示唆を与えてきた。コロナ時代における高等教育の在り方と方向性に対して、オンライン授業は、これからの時代の高等教育の一形態として定着していく可能性さえ取り沙汰されている。
 世界で、コロナ禍の間にオンライン授業が展開されてきた。その実態は多様であり、現時点では質の保証が一定であるとは言いがたい。日本でも、多くの大学で提供されてきたオンライン授業の方法は、資料提示型・動画配信型・双方向型など多岐にわたっている。その教育方法やテクノロジーの評価はこれから、というのが現実的だろう。
 多くの高等教育機関で、オンライン授業についての評価に関する調査を学生に対して行っている。そうした調査から浮かび上がったメリットとしては「双方向型のオンライン授業では、グループワークが対面授業よりも質の高い状態でやり取りができる」「学生が時間を有効にマネジメントすれば、主体的に学ぶことも可能である」といった点が示されている。一方、デメリットとしては「課題が多過ぎて大変である」、資料提示型の場合に「抽象的な内容の場合、理解が難しい」等の声や、新入生の場合には「レポートの書き方も十分でないのにも関わらず、課題で多くのレポートが課せられたのは辛い」といった声が聞かれるなど、課題の多さの問題点も指摘されている。また、学生の学習時間の増加を実感している回答も多い一方で、オンライン授業による学習成果については、確認することの難しさも含めて課題として指摘している調査も多い。さらに、教員のオンライン授業に関するFDや支援体制も必要不可欠である。
 本連載で2回にわたって紹介した4カ国・地域調査を例にとれば、米国の学生は今後もオンライン授業の継続を希望している比率が高く、台湾では対面型が多かったが、オンライン授業と対面型が相互に機能し、相乗効果が生じていた。つまり、双方共に学びの実感が伴っていたことが確認されている。「オンライン式の授業のほうがよく勉強するようになった」「対面式に比べてオンライン式の授業のほうが十分に学べていると感じる」という意見に対する肯定的な日本の学生の比率は3割強。米国や台湾と比べると低いが、韓国とは類似した傾向だった。一方、「オンライン式の授業を受けていてつまらないと感じる」「オンライン式の授業が多く、授業を受けていて孤独を感じる」という意見を肯定している比率は、他国・地域よりも高いわけではなく、対面式で授業を受けたいと希望する比率も他国・地域より低い。
 日本では、昨年より対面式からオンライン授業へ急速に転換したことで、教職員・学生にとって対処が難しかったことも大きい。しかし、コロナ時代では、対面式の授業にオンライン授業も組み入れていくことがニューノーマルな状況になるとも考えられ、学生・教職員がオンライン授業の経験を効果的に結びつけるように展開していくことが求められるだろう。すでに、多くの大学によるグッドプラクティスが蓄積されつつある。このようなノウハウが共有され、さらに効果の検証がなされることにより、オンライン教育の可能性の広がりが期待できるはずだ。





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