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203号

2022/05/24

 春の大型連休が明け、街に喧騒が戻ってきた。私事だが、幾分久しぶりに帰省し、ローカル線の車窓から望む地元の田園風景が懐かしく映った▼詩人・宮澤賢治の代表作の一つに『雨ニモ負ケズ』がある。教科書で読んだことがある人も少なくないだろう。詩の中で「一日ニ玄米四合ト味噌ト少シノ野菜ヲタベ……」という一節を読んだ当時の感想として「大人でも四合は食べないのではないか」と子どもながらに疑問を抱いていたが、これには、賢治の生きていた時代性が関わっているという▼当時の貧しい農村部では副食が豊富ではなく、少ないおかずで大量の玄米ご飯を食べ、お腹を膨らませつつ栄養バランスも摂るのが基本だった。病弱で小食傾向と伝わる賢治にとって、この量を食べることは決して大げさな理想ではなく、当時の「普通」を表していたのだろう▼クラス替えをしたばかりの生徒や人事異動で新たな部署に配属となった社会人など、環境の変化に慣れずに心身の不調を感じて「五月病」になる人がいるとも聞く。現代ではごく一般的となった美味しいお米を食しつつ、安全・安心に生活できる社会を作ってくれた先人に感謝しながら、心身の回復を図りたい。



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