204号
2022/06/17
6月に入って関東は梅雨入りし、すっきりしない日々が続いている。祝日がないことで知られる6月にあって、3日が測量の日と知る人は意外に多い。測量と言えば、江戸時代に日本全国を行脚し、実測による日本地図を初めて完成させた伊能忠敬を思い浮かべる人も少なくないだろう▼忠敬は商人として才を発揮した後、49歳で家督を譲り隠居。50歳で江戸に移り、55歳から71歳まで日本全国の測量を行った。完成した地図の精度は極めて高いことで知られる▼全国にある銅像は、彎窠羅針(わんからしん)と呼ばれる、杖の先に方位磁石のついた測量機器を手に携えていることが多い。忠敬は「導線法」と「交会法」と呼ばれる測量方法に天体観測を組み合わせ、こうした道具を駆使しながら繰り返し測量することで、地図の精度をより高めることにつなげたのだと聞く▼現代では、スマートフォンのアプリを使うことで、目的地までの最短経路を一瞬で視覚情報として得ることができる。しかし、地図をイチから作ろうとすれば、やはり一歩一歩、距離や角度を測る作業が必要となるに違いない。受験の天王山と称される夏が目の前だ。コンパスを手放すことなく、地道な努力を積み重ねていきたい。
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