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第5回 大学におけるキャリア教育②インターンシップ
2022/09/22
連載 キャリア教育と高校・高等教育改革
第5回 大学におけるキャリア教育②インターンシップ
夏目 達也
大学におけるキャリア教育の取り組みとして、今回はインターンシップについて考えてみたい。インターンシップへの応募・参加は大学を通じて行うもの(キャリアセンター等を窓口にインターンシップを紹介・斡旋する)と、学生が就職情報サイトを活用して自力で行うものとがある。学校を通じて参加する場合、正課活動と正課外活動の両方の扱いがある。
文部科学省「令和元年度大学等におけるインターンシップ実施状況について」(令和2年)によると、インターンシップ(単位認定と認定外の一方か両方)に参加した学生の合計は約69万人(学生全体の24・0%)。正課活動のインターンシップでは単位が認定されるが、対象となるのは特定資格取得のための現場実習(教育実習、看護実習、臨床実習等)がほとんど。資格取得外での参加では、認定単位数は2単位以下、必修・選択別では選択が多い。参加者は学部3年次と修士1年次が多く、8月・9月の夏季休暇期間中、2週間未満の参加が多い。一方、単位が認定されないものでは、期間は1週間未満が多く、最近は1日のみの参加が増えている。
インターンシップの内容は企業や職種により多様である。❶企業による業務内容や業界の状況等の説明を行うもの、❷職場で見学や業務体験を行うもの、❸実際の業務課題の解決策を検討するもの、❹職場で業務に従事するもの――などだ。
学生にとって、インターンシップ参加のメリットは大きい。外部からは窺い知ることのできない企業の活きた雰囲気を知る。業務の一端を担当し、企業や仕事、働く人の現実を理解できる。自分の適性や将来の職業に気づく等だ。中には、現場で得た知識・スキルや経験が、就職活動(エントリーシートの作成、面接等)に役立つとの意見もある。
留意すべき点もある。企業の主な目的は利潤追求であり、学生の教育ではない。企業が大きな負担をしてまでインターンシップを実施するのは、それなりのメリットがあるからだ。指導体制を組み、学生の成長につながる経験を提供できる企業ばかりではない。条件が整わず必要な経験を提供できない企業もあり、その場合不本意な経験に終わることもある。学生がメリットを引き出すには、これらの点を十分理解した上で企業やプログラムを選択し参加することが前提になる。
また、教育活動としての役割にも留意が必要だ。インターンシップは、大学で学修した内容を現場で実際に活用することで、知識を具体化・高度化させたり、大学の教育や学生生活の意義を発見・確認したりすることができる。単位認定の有無に関わらず、大学がインターンシップに関わる以上、教育活動として位置づけているはず。とすれば、まさにこの点こそ重要だ。
日本学生支援機構の「学生に対するインターンシップ実施状況調査(平成26年度)」によれば、インターンシップのメリットに、「視野が広がった」「社会で働くイメージが明確になった」等をあげる学生が多い一方、「大学の専攻分野と仕事の関係について理解できた」「大学での学びの重要性を再認識した」をあげる学生はやや少ない。
この結果を裏づけるかのようなデータもある。文科省調査「大学における教育内容等の改革状況について(令和元年度)」によると、正課外のキャリア教育では、「インターンシップを取り入れた特別講義等」を開設した大学は全体の43・9%に過ぎない。
ほとんどの学生は社会や職業の実際にふれる機会が少なく、企業に対する理解度が不十分である。企業の社会的性格や役割、従業員の責任と権利等について正確な知識・情報を提供し、それを現実の場面で活用できるように指導することが必要だ。就職活動ではなく、あくまでも教育活動としての意義を理解させることも同様だ。そのためには、まずインターンシップの開始前・終了後の指導を充実させることが大学に求められる。
ほとんどの学生は社会や職業の実際にふれる機会が少なく、企業に対する理解度が不十分である。企業の社会的性格や役割、従業員の責任と権利等について正確な知識・情報を提供し、それを現実の場面で活用できるように指導することが必要だ。就職活動ではなく、あくまでも教育活動としての意義を理解させることも同様だ。そのためには、まずインターンシップの開始前・終了後の指導を充実させることが大学に求められる。
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