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第91回 聖学院大学 学長 小池 茂子氏

2023/05/29

教職連携で取り組む手厚い支援が学生の自信に
聖学院大学 学長 小池 茂子氏





 「神を仰ぎ 人に仕う」を建学の精神に掲げ、徹底した少人数教育で入学したすべての学生が成長を実感できることを目指す聖学院大学(埼玉県上尾市)。
 今春4月、新学長に就任した小池茂子前副学長を訪ね、人文学部児童学科から改称して注目を集める「子ども教育学科」のアウトラインと共に、自身の今後のビジョンとあわせ大学としての展望をうかがった。





可能性を引き出す少人数教育 「人間を育てる」力を養う
――学長就任に際しての心境をお聞かせください。
 学長に就任し、少しずつ校務が始まりました。責任の重大さを痛感しているところではありますが、キリスト教主義を標榜する大学として「一人を愛し、一人を育む」教育を今後も続けていきたいと考えております。
 また、本学は比較的規模の小さな大学ということもあり、教員や職員の意思疎通が十分に図られているのが実感としてあります。教員と職員の連携をこれまで以上に深めていき、学生一人ひとりを大切に育てる教育・研究環境を整えていきます。

――聖学院大学の特色や学びについてご教授ください。
 本学はキリスト教の精神を根幹に据え、かけがえのない存在である学生一人ひとりを愛し、現代社会の各分野において貢献できる人材を養成しています。
 それを実現する一つの方法として、ゼミナールは15人以下を基本に実施しています。徹底した少人数教育を行うことで、教員は学生の名前や状況を把握することが可能です。加えて、彼ら・彼女ら一人ひとりの意見や反応にじっくりと向き合うことで、学生の良さを引き出すことができています。
 授業時間外においても学生と教員の好ましい関係が築かれている様子は、私が入職した当時から変わりません。学生と教員の距離の近さが本学の特色の一つです。

――学業と共に、日常的な学生生活も下支えしています。
 学生支援課やキャリアサポート課、ラーニングセンターなど、学生のあらゆる相談を受ける部署の職員と教員の連携も本学の特色であると言えるでしょう。個別学生の状態をすべての教員・職員間で常に共有しているため、ニーズや悩みに応じて、相応しい職員、または教員が適切なタイミングで支援に入っていくことができます。
 教員・職員が一体となって建学の精神を理解・共有し、学生に寄り添った指導をごく自然に実践してきた結果、本学はいつしか「面倒見のよい大学」として社会的な評価が定着してきたように思います。教職連携で一人ひとりの学生を決して孤立させることなく、可能性を引き出してきた教育力こそが本学の最大の強みの一つであると考えております。

――児童学科が「子ども教育学科」へと名称変更されました。狙いはどこにありますか。
 旧・児童学科の時代には、高校生や受験生のみなさんから「児童学とは何を学ぶのか」という質問をいただくことが少なくありませんでした。児童学とは、子どもと大人が共に生きる社会を形成していくため、子どもや子どもの発達を理解していくという学問ですが、それがどうも伝わりにくかったようです。より伝わりやすい名称に変更しようという発想が端緒となりました。
 「児童」という言葉の意味をより分かりやすく伝えるため、「子ども」に変更しました。さらに、本学科の学びの中心には教育・保育者の養成課程があることから、「教育」という言葉を加え、「子ども教育学科」としました。しかし、学ぶ内容はこれまでと変わりません。名称変更を機に、学科全体に教育理念をより浸透させ、学びの価値を高めていきたいと思います。

――以前、児童学科は人間福祉学部に設置されていたとうかがいました。
 旧・児童学科は、平成30年に人間福祉学部から人文学部に改組された背景を持っています。卒業後、保育士や幼稚園教諭、小学校教諭として「人間を育てる」という職業に就く学生が少なくない学科でしたが、資格取得のための知識や技術だけではなく、「人間を考える」人文知の地盤を備えて欲しいと考えたのです。
 また、学生たちの「聞く」「読む」「話す」「書く」といったコミュニケーション力の低下に対して懸念があったのも事実です。これらの力は、人間を育てる保育・教育の現場において必要不可欠なものです。これらの課題を解決するため、「言葉」を手厚く学ぶことができる人文学部への移行を決断しました。
 今春から子ども教育学科としての学びが始まりましたが、本学科の学生には、4年間の学びを通じて「人間とは何か」「人間を育てるとはどういうことなのか」といった人間理解を深めてもらい、人格を形成していく過程である教育・保育の問題を探究していく力を身につけることを期待しています。

――子ども教育学科の特色を教えてください。
 本学科では、子どもの言葉や表現、心理などを理解することを学びの第一歩に、児童学に基づく理論と実践を学んでいきます。法人系列の幼稚園や小学校、周辺地域の保育・教育施設と連携した臨地実習やボランティア活動も充実していますので、実践的な学びが可能となっています。
 保育・教育職を希望する学生に対する支援体制も万全です。実習準備室と教育支援センターの専従スタッフが資格・免許状取得から採用試験対策、赴任前準備までサポートを行っていきます。仮に、それが正課外のボランティア活動であっても協力を惜しみません。
 保育・教育の現場に限らず、卒業後の進路は非常に多彩です。玩具や文房具メーカをはじめ、児童書や図鑑を制作・発行する出版社のほか、旅行会社や不動産会社、外資系の金融機関など、一般企業に就職する学生もいます。
 例えば、不動産会社は一見子どもと関連がないように思われがちですが、妊娠や出産を機に不動産購入を考える家族が少なからず来店する実態があります。また、旅行会社では修学旅行や家族向け旅行の商品企画や販売に携わる機会があるかもしれません。保育・教育の現場に限らず、社会のあらゆる場所は子どもと関わっており、そこにこそ職域や仕事が広がり有為な人材が待望されているのです。
 子どもの世界に対する理解を深めることは、子どもの意を汲み取る力、ひいては「他者と関わり、他者を配慮する力」を育みます。この力は、どのような仕事でも必要とされる能力と言えるでしょう。卒業後の進路が限定的ではないところも本学科の特色の一つです。


学生の想いに応える厚い支援 「自信」を育み、「自立」を促進
――今後のビジョンをお示しください。
 近年、大学教育には、大きな変革が求められています。その中の一つに学習者本位の大学教育というものがあります。本学においても学生の学びを可視化し、いかに成長できる大学であるのかを示していく必要があります。
 具体的なものとして、学生が自分の学修を振り返る際に活用することができる「学修ポートフォリオ」の導入を考えています。学生に学びの成果を届け、学修に対する意欲を高めていくのと同時に、本学の教育がどのような成果として結実しているのかをデータ化し、分析を重ねていきます。結果によっては、カリキュラムの再編成が必要な場面もあるでしょう。その意味で、PDCAサイクルを活かした教育の質保証システムを構築していきたいと考えています。

――貴学で学ぶ学生に何を期待しますか。
 「一歩を踏み出す勇気」をぜひ持って欲しいと思います。本学には学生の個性を伸ばし、成長を支える環境があると自負していますが、これは学生のみなさんの意志があってこそ力を発揮するものでしょう。
 また、この4月に学生のどのような相談にも応じるワンストップ窓口「学生エンカレッジセンター」をオープンしました。
 学生たちは、大学生活を通じて実にさまざまな悩みにぶつかります。そのような時、「どこに相談すれば良いのか分からない」と感じるケースが少なくないと聞きます。特に、近年は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、学生同士の情報ネットワークが遮断された結果、学生の孤立化が問題となっています。分からないことや悩みが生じた際、足を運べば担当部署につないでくれるワンストップ窓口は、現に困り果てた学生を救い出す場所として機能するでしょう。
 今後は、専門資格を持つ職員のほかに、学生スタッフも配置し、学生間の支え合いをさらに後押ししていきます。窓口に来ていただければ、何でも相談に乗りますし、必要な支援部署へとつないでいきます。
 本学が目指しているのは「一人も取り残さない」教育ですが、これを実践していくのは考える以上に難しさが伴います。学生たちの一歩を踏み出す勇気が必要不可欠です。その一歩があれば、本学は学生生活を支えていくことをお約束します。

――全国の高校生に向けてメッセージをお願いします。
 本学では「一人を愛し、一人を育む」という教育スローガンを教職員全員で共有しています。あらゆるニーズに応じた支援や学生の個性を引き出す環境が整っていますので、私どもの教育に信頼を寄せていただきたいと思います。学生は、教員や職員から大切に育てられ、薫陶を受ける中で見違えるように成長します。本学では、自信を持って社会へ自立していくみなさんの歩みを支えていきます。
 みなさんとの出会いを、楽しみにしています。





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