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第92回 日本薬科大学 学長 都築 稔氏

2023/10/26

「1区」の高校生を「3区」の社会に届けることが使命
日本薬科大学 学長 都築 稔氏




 「個性の伸展による人生練磨」を建学の精神に掲げ、1学部2学科体制で薬剤師をはじめ、医療・ヘルスケア業界で活躍できる有為な人材の育成に注力している日本薬科大学(埼玉県北足立郡伊奈町)。都築稔学長を訪ね、大学の特徴を中心に、今後のビジョンや全国の高校生に向けたメッセージなどをいただいた。




令和6年に大学創立20周年 今春、韓国薬学コースを新設
――日本薬科大学の特徴を教えてください。
 本学は平成16年、自然豊かで「バラのまち」としても有名な埼玉県の北足立郡伊奈町で開学しました。来年に節目の創立20周年を迎える比較的若い大学です。
 学部・学科については、薬学部の中に6年制の薬学科と4年制の医療ビジネス薬科学科を設置しています。薬学科では「地域医療を支える薬剤師」の育成を目指しており、4年次からは「健康薬学コース」「漢方薬学コース」「医療薬学コース」の3コースに分かれて専門性を身につけていきます。
 医療ビジネス薬科学科は、薬学以外にも医療やビジネス全般に関する知識・技能を身につけ、卒業後は病院などの医療事務職や薬局・ドラッグストア・医療機器メーカーといった医療・ヘルスケア業界で活躍できる人材を育成しています。2年次からは「スポーツ薬学コース」「栄養薬学コース」「ビジネス薬学コース」「情報薬学コース」「韓国薬学コース」の5コースに分かれ、各自の目標に向かって学びを深めていきます。
 また、本学は開学当初から漢方やアロマテラピーに関する最先端の教育・研究を行っています。大学での研究成果を大学内だけにとどめるのではなく、健康や美容に興味・関心のある一般の人々や社会人の方々を対象に「漢方アロマコース」などの講座も開講しています。


――二つのキャンパスが効果的に運営されている印象があります。
 本学のキャンパスについては、さいたまキャンパスとお茶の水キャンパス(東京都文京区)の二つのキャンパスを擁しています。
 薬学科はさいたまキャンパス、医療ビジネス薬科学科はお茶の水キャンパスを基本としていますが、さいたまキャンパスの敷地は東京ドーム3個分に相当する約5万坪の広さで、テニスコートやグラウンドなどもあり、部活動やサークル活動は主としてさいたまキャンパスで行われています。スポーツ薬学コースと栄養薬学コースは課外活動に参加している学生が多いため、こちらの2コースについてはさいたまキャンパスに設置しています。

――韓国薬学コースは今年新設されたとうかがいました。
 韓国薬学コースは、予防医学の観点から日本の伝統医療や諸外国の伝統医療を学び、個人の生活の質(Quality of life)の低下を防ぐことだけにとどまらず、疾病予防と健康増進に貢献できる人材の育成を目指しています。
 コース名に韓国という名前が入っている通り、韓国の伝統医学である韓医学や韓国の薬草療法、韓国の食養生をメインに学んでいきますが、現代社会では中国の伝統医学「中国医学」、インドの伝統医学「アーユルヴェーダ」、そしてイスラム文化圏の伝統医学「ユナニ医学」が〝世界三大伝統医学〞として知られていますので、こうした世界の伝統医学についても幅広く学ぶことができる特色豊かなコースとなっています。
 このコースでは、韓医学の最高峰とされる慶熙(キョンヒ)大学校(韓国・ソウル市)の教授の講義を学内で受講することができるほか、韓国の提携大学への留学制度も整備されており、韓医学だけではなく、韓国語や韓国文化についても学ぶことができるのが大きな特色の一つです。そのため、卒業後は韓国をはじめとする世界各国で有為な医療ビジネス人材として活躍することが可能です。


多彩な協定を通して社会貢献 今後も選ばれる大学を目指す
――数多くの企業や自治体、教育機関等と協定を締結する狙いはどこにありますか?
 私は大学の役割の一つに社会貢献があると考えています。そのため、多数の企業や自治体、高校や大学などの教育機関と積極的に協定を締結し、さまざまな取り組みを一緒に行っています。
 最近では、9月13日に東京都と北海道に日本語学校を3校展開している友ランゲージグループ(本部東京・新宿区)と協定を締結しました。本学は日本人学生はもちろん、薬学に興味のある外国人留学生の入学も歓迎していますので、今回の協定締結によってキャンパス内がより一層グローバル化することを期待しています。
 また、9月20日には埼玉県雇用対策協議会(さいたま市)、9月26日には清和学園高等学校(埼玉県入間郡越生町)、そして10月3日にはラグビー日本代表の稲垣啓太選手や堀江翔太選手らが在籍している国内屈指の強豪ラグビーチーム・埼玉パナソニックワイルドナイツ(埼玉県熊谷市)と包括連携協定を締結しました。
 今後もさまざまな企業や団体と協定を締結し、協力して活動を行うことによって、社会で活躍できる有為な人材の育成や地域の発展に貢献していきたいと考えています。

――貴学の就職支援について教えてください。
 本学の就職課では、学生の就職に関する相談対応やエントリーシート・履歴書の添削、面接対策など、学生たちの就職をバックアップしています。その上で、私は「大学卒業後は医療人として人々の役に立ちたい」という強い気持ちを持たせることが最大の就職支援につながると考えています。
 その視点から、学生たちには地域連携活動に積極的に参加したり、災害医療の現場を実際に見に行ったりといった机上だけではできない学びも薦めるようにしています。こうした経験を積み重ねた学生たちは、卒業後も高いモチベーションと倫理観を持って社会の最前線で活躍してくれるのです。

――学長として今後の目標をどこに置いていますか?
 人生を駅伝に例えてみると、幼少期から高校生までが「1区」、大学生が「2区」、社会人が「3区」、そして定年後が「4区」だと考えています。
 「2区」である私たち大学の役割は、1区を走ってきた高校生を3区の社会へとしっかり届けることです。従いまして、襷をつなぐ1区と3区のことについては、教職員全員が十分に理解していなければいけないと思っています。社会の変化に伴って1区と3区の状況もまた激変しており、とりわけ3区に関しては高齢化や健康志向の高まりなどによって今後は間違いなく医療・ヘルスケア業界の需要が伸びていきます。
 そのため、社会的なニーズが高い業界や分野に有為な人材を数多く輩出することを目的に、今後もさまざまな高校や企業等と密にコミュニケーションを図り、スムーズに襷をつなげるように教職員一同不断の努力を続けていくつもりです。

――貴学の今後のビジョンをお示しください。
 この秋、9月15日に厚生労働省から発表された「令和4年(2022)人口動態統計(確定数)」によると、令和4年に生まれた子どもの数は77万759人で、統計を開始して以来初めて80万人を割り込んだことが大きなニュースになりました。総務省統計局によると、現在の18歳人口は約112万人と推計されていますので、18年後の18歳人口はいまより30 万人以上も少なくなる計算です。
 また、文部科学省の『令和4年度学校基本調査報告書』を見ると、令和4年3月に高等学校等を新しく卒業した99万230人のうち、大学(学部) に進学した人は54万6589人と、進学率は55・2%でした。近年は右肩上がりが続いていますので、私の予測では近い将来60%は超えてくると思っています。大学進学率の上昇は私たち大学関係者にとっては喜ばしいことですが、子どもの数は減っていますので、今後も大学業界が厳しい状況に置かれていることには変わりありません。
 それでは、一体どうすべきなのか。本学としては日本の高校生だけではなく、海外からの外国人留学生や社会人など、多様な入学志願者を積極的に受け入れ、ダイバーシティなキャンパスの実現をより一層加速させていきたいと思っています。そのためには、まずは大学自体が魅力的な存在になる必要があります。日本国内はもちろん、国際社会の動向を注視しながら、時代に合った新しい教育改革を積極的に展開し、約18年後の2040年頃には多くの受験生から支持される大学でありたいと考えています。

――全国の高校生に向けてメッセージをお願いします。
 高校生の進路には数多くの選択肢がありますので、時には迷うことも少なくないかもしれません。しかし、高校では探究学習が行われていますし、各大学ではオープンキャンパスが定期的に開催されていますので、そうした機会を有効活用してみてください。探究学習の理念にもあるように、主体的に行動することによって、自分自身がやりたいことが見えてくるかもしれません。
 その上で本学の学びに興味・関心のある高校生のみなさんは、ぜひ本学の門を叩いてください。日本薬科大学には充実した教育環境が整っていますので、きっと本学で大きく成長することができるでしょう。

――全国の高校の先生方にメッセージをお願いします。
 全国の高校の先生方は、日々の授業に加えて部活動や進路指導など、極めて多岐にわたる業務がありますので、とてもお忙しくご苦労も少なくないと存じます。
 しかし、日本社会の将来を担っていくのはいまの若者たちですので、1区を走る高校生を2区・3区へと成長させて送り出すという気持ちを私たちと共有していただきつつ、日々の業務にあたっていただければ嬉しく思います。
 何か困ったことがあれば、2区の大学としてサポートできることは積極的に対応しますので、その際はお気軽にご相談くださいということもお伝えしたいと思います。






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