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第3回 大学教員を知るデータ

2024/06/24

連載 高校生のための大学四方山話

3回 大学教員を知るデータ

村澤 昌崇


 大学の大衆化が叫ばれて久しいが、論じられるのは学生の大衆化ばかり。同様に大衆化しているはずの教員が論じられることはまれであり、教員を論じる根拠になりそうなデータも多いわけではないことを前回ではふれた。そうした中、愚直に大学教員の実態を調べ続けている研究データがある。私の所属である広島大学高等教育研究開発センターを実質的な母体として、国内・外の研究者が集う国際的な共同研究として展開している「大学教授職調査」(Academic Profession Research)である。今回から数回はこの調査研究にふれることにより、大学教員の一側面を覗き見してみよう。
 「大学教授職調査」は、平成4 1992)年に日本・米国・ドイツの3カ国による国際共同研究としてスタートした。その後平成192007)年、平成2311)年、平成2917)年にも調査が実施されており、現在では参加国は30カ国を超える。大学教員を対象とし、かつ国際的な共同研究として展開している調査としては、おそらくは唯一無二だろう。この調査を日本で牽引してきたのは、有本章氏だ。私が現在所属している広島大学高等教育研究開発センターに長らく在籍して同センター長も務め、そして平成1503)年には秋の園遊会にも同センターを代表する形で招待された。これらの成果は『大学教授職の国際比較』『変貌する日本の大学教授職』『変貌する世界の大学教授職』等の一連の書籍にまとめられているため、関心のある方はご一読いただきたい。やや脱線するが、私も同研究には関わっており、上記書籍にも寄稿している。しかし、まだ若かったこともあり、いま見返すと何とも青臭い分析をしており、穴があったら入りたく、改めて分析し直したいような代物を上梓している―と言い訳をしておく。
  さて本題に戻ると、この調査は端的に言えば、大学教員の活動や意識を全方位的に網羅しようとする調査になっている。主だった調査項目は以下の通りである―大学教員の諸属性・経歴(性別、年齢、職位、身分[常勤か非常勤]、本人の研究の専門分野、本人の所属組織の専門分野、出身大学、学位取得の状況、勤務年数、父母の経済状況や学歴、配偶者や子どもの有無など)、仕事の環境(活動時間、収入、職場の雰囲気・充実度・満足度)、教育活動(授業負担、教育内容、教育活動に関する意識)、研究活動(論文や著作等の研究業績数、研究費、研究活動に関する意識)、社会的活動・社会サービス・社会貢献(大学外部からの依頼、社会貢献に対する意識)、管理運営(大学内の権限の所在、大学内部での回答者の影響力、管理運営に関する意識)、国際化(外国語論文の執筆、外国の研究者との共同研究、渡航状況、留学生の輩出・受入状況、国際化に関する意識)など。 
 実際の質問項目はもっと多く、時としてA4判で20ページを超える大部な調査になっている。もともと国際的な共同研究で現在では30を超える国からの参画がある。制度も文脈も異なる多彩な参加者の研究関心や調査したい内容も多岐にわたり、質問項目に関する共通合意をまとめあげるのは容易ではない。また、大学教員の基本的な四つの活動(教育、研究、管理運営、社会貢献、医学部に関しては附属病院での診療も)に関わる客観的事実を詳述してもらうだけでも、大変な情報量になる。さらにこれら大量の質問を大学教員に答えてもらうのだから、回答側である大学教員の負担も相当なものとなる。もし自身がこの調査の対象者だったとしたら、あまりの量に圧倒され回答を拒否するか、あるいは回答の途中で止めてしまうか、適当に答えてしまうかもしれない。大学教授職調査に限らずアンケート調査にはこうした回答拒否や不誠実な回答そして虚偽回答がつきまとい、それへの科学的対応も考案されてはいる。とりあえずその問題にはいったん目をつぶり、次回はそのデータの傾向を見ていくことにしよう。

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