トップページ > 連載 出欠確認の教育効果 > 出欠確認の教育効果(4)
福永 栄一大阪成蹊大学 現代経営情報学部 准教授
fukunaga@osaka-seikei.ac.jp
- 略歴:
- 昭和35年山口県生まれ
- 昭和59年3月静岡大学理学部物理学科卒業
- 昭和59年4月:商社に入社
- 14年間情報システムの開発・運用を手がける。
- 平成15年4月:青森大学経営学部講師
- 平成18年4月:青森大学経営学准教授
- 平成20年4月:大阪成蹊大学准教授
- 昭和59年3月静岡大学理学部物理学科卒業
- 資格:
- 中小企業診断士、ITコーディネータ・インストラクター
- 公職:
- 青森地方最低賃金審議会委員など
- 著書:
- 環境会計と情報開示(平成12年11月、税務経理協会)
中小企業の国際化と海外進出(平成14年6月、中小企業診断協会)いずれも共著 - 受賞:
- (社)中小企業診断協会主催‘05「中小企業経営診断シンポジューム」で、「携帯電話での出席管理システム」の導入事例を発表した論文で、中小企業庁長官賞(最優秀賞)受賞
出欠確認の教育効果(4)
2008/01/09
<連載第4回目>
「携帯電話での出欠確認システム」開発から運用まで
- プロジェクト管理の内容と重要性 -
出欠確認システムは数多存在するが、このシステムだけが全学部・全授業で導入され成功していると評価されている。前回このシステムを実現した技術と構築思想を紹介したが、これだけでは運用を見直しながら3年間進化し続けることはできない。そのためには、情報システム開発から運用にいたるプロジェクトの管理が必要である。以下、携帯電話での出欠確認システム開発・導入・運用をプロジェクトとして捉え、そのポイントとしてプロジェクトメンバーについて解説する。
■プロジェクトメンバー
2004年5月から、理科系4名の教員で出欠確認システム導入の検討を始めた。そこで、文科系の教員もメンバーに加えるよう提案した。これ対して、「情報システムを検討するのだから門外漢の文科系教員は必要ない」という意見が多かった。確かに文科系の教員には情報システムの技術は理解できないかもしれない。しかし、システムが導入されれば文科系の教員もそれを使う。本学の場合、文科系の教員の方が多いので、むしろ文科系の教員のメンバーを多くすべきである。
さらに、事務職員をメンバーに加えることを提案した。教員と職員が対等に意見を出し、検討できるような組織にすべきだと提案した。議事録は職員(または教員)が書くのではなく、教職員全員を対称として輪番で書くような会で検討するべきである。出欠確認システムを授業で使うのは教員であるが、大学全体での出席分析、システム活用は事務職員が中心になって行うからである。これに関しては、強い疑問を投げかけられた。「教員だけで考えられるはずだ」、「前例がない」などである。
2004年9月までの5ヶ月間、理科系教員4名で出欠確認システムの検討を行い、10月から全学で取り組むプロジェクトに移行した。それ以降、各学科、各部局から1名ないし2名参加してもらい、対等の立場で意見を出し合える6つの組織を随時立ち上げた。
・IT化検討会打合せ会(2004年10月-現在)
教員3名、職員2名の委員会。次のIT化検討会の議題提示や支援を目的に設立した。
・IT化検討会(2004年10月-現在)
学長、学部長、局長などを中心とした、出欠確認システム開発の最高意思決定機関として設立した。大学の会議は、通常、学部ごとに月1回しか開催されないので、短期間での意思決定ができない。そのため、直ぐに集まって意思決定ができるように、通常の部会とは別に設立した。
・勉強会(2004年10月-12月)
より多くの教員に出欠確認システムの効果や費用、デメリットなどを理解してもらい、システム開発への理解を得ることを目的として設立した。
・IT化作業部会(2004年10月-現在)
出欠確認システム開発のためには、多くの作業が必要になる。その都度、各学科や部局で説明し、調査や検討を行わないといけない。最も時間がかかり面倒な作業である。それをお願いするために若手を中心に設立した。
・サポーター(2005年4月-7月)
教員の積極的な参加を促し、システム導入時の事務職員の負担を軽減し、トラブルのないシステム導入を実現するために設立された2004年前期だけに限定された一時的な組織。各学科5名、合計25人の教員で組織し、この25人が先ずシステムを使用して操作方法や機能を理解する。その後、まだシステムを使っていない教員のサポートを行う。
・運用委員会(2006年4月-現在)
出欠確認システム導入に伴って、学内のルールを変更しなければならないことが随時発生した。そこで、システム運用に関する最高意思決定機関として、学長、学部長、局長などを中心にした委員会を設立した。IT化検討会と同様迅速な意思決定が目的である。
これらの委員会のおかげで、携帯電話での出欠確認システムに関しては、①全学部、全部局から迅速な意見収集ができるようになった。また、②全学部、全部局に的確に情報配信することで、③情報共有を可能とし、④短期間での検討、ルール変更、意思決定が可能\となった。これが3年間運用し、年々運用方法等を見直しながら進化できているポイントの一つである。
次回はもう一つのポイントである、システム機能改善について説明する。