〔第 71 号〕
2010/09/08
残暑と呼ぶには、あまりに暑い日々が続いている。観測史上まれな猛暑と喧伝されるが、いまから87年前、1923年9月1日の気温もまた、常識を大きく覆すものであったらしい。関東大地震である。その災禍は、むしろ火災によって未曾有の規模にまで膨らみ、震源に近い場所は一瞬にして焼け野原になったと聞く▼現代の焼け野原の様相を呈しているのが、60・8%という新規大卒者の就職率だ。関係者の誰もが驚かされたのは、1948年の調査開始以来最大だという、7・6ポイントもの大きな下げ幅だろう▼日本型の終身雇用を前提とする「新卒一括採用システム」は崩壊寸前だ。その影は、新卒・既卒を問わず、いまや若者全体を覆い尽くしている。10・7%という、15~24歳の完全失業率(総務省、6月)はすべての年齢世代平均(5・2%)の2倍を軽く超える▼もはや一刻の猶予もならない。新年度から大学教育に「職業指導」(キャリアガイダンス)が導入される一方で、脆弱な受け入れ体制を放置することは許されない。震災後に奇跡的な復興を遂げたように、対症療法に奔走するのではなく、国家を挙げての抜本的改革の断行と強いメッセージが求められている。