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〔第 77 号〕

2011/07/01

 仲夏の風物詩といえば蛍だろう。闇に仄かに浮かぶ幻想的な光に魅了される人は少なくない。その蛍で思い出されるのが、「蛍窓雪案」だ。夏は窓の蛍の光を頼りに勉強し、冬は雪明りで学ぶという苦学のたとえである▼苦学の定義は一様ではないが、被災地域の高校生たちもまた、学ぶのに大変苦労していると知った。級友と別れての学校生活。部活動の楽しみも半減した。進路選択に悩む場面もあるに違いない▼震災当初、電力不足にあえぐ東電に他の電力会社とりわけ中部電からの支援がないのが疑問だった。50㌹と60㌹、東西で異なる周波数ゆえ、送電自体が容易ではないのが主な理由らしい▼周波数を東西に分かつ境界は、一般に静岡県の富士川と新潟県の糸魚川を結ぶ線だとされている。実は、これとほぼ同じラインで、発光態様に基づいて蛍も東西に分けられるというから興味深い▼汚染水の処理は遅々として進まない。聞けば、童謡「ほたるこい」で歌われる「甘い水」とは、農薬や洗剤に汚染されていない清流の水を指すのだという。それが放射性物質であったとすれば、何をか言わんやである。いつの日か、蛍がこぞって集まる清らかな水をみんなで取り戻したい。

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