〔第 79 号〕
2011/11/01
晩秋である。木々の色づきが趣のある季節となった。温暖化が原因なのか、色合いの鮮やかさが足らないという指摘もあるが、それでも寒い地方や高原の紅葉は以前と変わらぬ風情だ▼一方、都心部では街路樹として利用されているからなのだろう、「紅葉」するカエデよりも「黄葉」するイチョウに馴染みがある。東京では神宮外苑の並木が有名で、休日は大勢の人でにぎわう。しかし、最近では12月近くになってようやく見ごろになるなど、「都会のイチョウ」は秋としての季節感が乏しいものになりつつある▼イチョウは大学のイメージに直結するが、その代表例は東京大学の本郷キャンパスだろう。シンボルマークのモチーフはイチョウで、学食や同窓会にもその名を冠している。その東大が現在検討しているのが「秋入学」だ▼日本を代表する大学だけに、好むと好まざるとに関わらず、その動向には常に注目が集まっている。議論の行方によっては、さまざまな影響がありそうだが、新学期は桜の舞う季節という日本人の文化と伝統を一変する可能性もはらんでいる。「大学のイチョウ」もまた、日本人の季節感を変えるのだろうか。目が離せそうにない。