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〔第 78 号〕

2011/09/01

 8月下旬、ゴルフの有村智恵選手がツアー通算9勝目を挙げた。有村選手と言えば、7月、アルバトロスとホールインワンを同一ラウンドで達成するという快挙でも話題をさらったばかりだ。アルバトロスは極めて難しいと聞くが、その邦名「アホウドリ」もまた、絶滅危惧種であるがゆえ、滅多にお目にかかれない▼アホウドリはかつて鳥島に無数生息していたが、明治期からの乱獲により激減。絶滅の危機を救ったのは、巣作りを始めるカップルを増やしていくという、ある大学教授発案の営巣に関する地道な活動だった▼しかし、そこは火山島。いつか大噴火しないとも限らない。そこで、さらに南の聟島へヒナ鳥を移送し、新たな拠点作りが始まった。現在は鳥島と聟島二島が、彼らの故郷になっている。翻って、東日本大震災。政府は被災者の集団移転を掲げるが、思うように進展していない▼「海辺に住みたい」と願う望郷の念と、「二度と津波に遭わない高台移転」という安全性、その二条件を同時に満たす方程式は難しく、その解を導くのは、やはり研究者にお願いしたい。思いもよらない着想を得て具現化し、苦境を救うのも大学の社会貢献の在り方の一つなのだと思う。

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