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第13号(平成24年2月15日発行) 俳優 中村 蒼さん

2012/06/04

小さなことから道が拓ける

 

俳優 中村 蒼

 

2011年は出演映画が次々と公開、昨秋には全国の大学・短期大学16校の学園祭に出演するなど、大忙しだった中村蒼さん。男性タレントの登竜門的な存在とされる「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」のグランプリ受賞をきっかけに芸能界入りした中村さんですが、意外にも当初は芸能活動に消極的だったといいます。

 現在は、俳優業と大学生活を両立させる中村さんに、自身の進路ストーリーを語っていただきました。

 

サッカーに没頭した小・中学時代

 小さい頃は、どちらかと言えば控え目な性格で、知らない人に会うと、母親の後ろに隠れるような子どもでした。それに、幼稚園くらいまでは父の仕事の関係で転勤も多く、新しい土地に行ってもすぐに離れてしまうという状況が続いたので、友だちの輪に混ざるのがあまり得意じゃなかったんです。

 それが、小学校に入る頃には福岡にずっといられることになって。当時の友だちに誘われてサッカーを始めました。それからは、同じサッカーチームの仲間と一緒にいることが多くなって、だんだんと友だちも増えてきたんです。

 

コンテストでグランプリを受賞

 中学校でもサッカー部に所属して、毎日サッカーばかりしていたんですけど、3年生の夏、父が僕には内緒で、「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」に応募しちゃったんです。そこからですね、少しずつ生活が変化してきたのは。

 僕自身はコンテスト出場に全然乗り気じゃなくて、書類審査用の写真も父に言われるがままに撮った記憶があります。学校の授業で、先生に指されて一人で教科書を読むのだけでも緊張するほど、人前に立つのが苦手だった僕にとって、コンテストは苦しいものでした。それでも、すぐに落選するだろうという思いもあって、軽い気持ちで臨むようにしたんです。だけど、気づいたら最終選考まで残っていて。嬉しいというよりも「どうしよう」っていう気持ちでしたから、グランプリを獲った瞬間は思わず「やばい!」と(笑)。過去に受賞された方はみなさん芸能界に入られていましたので、自分もそうなるのかなと思うと、何となく怖くて。福岡を出て一人暮らしをして…なんて、当時の僕にとっては想像を絶する世界だったんです。

 

単身上京。変化した仕事への意識

 中学卒業後、最初の一年は福岡の高校に通いながら、東京にある事務所に毎週1回レッスンに通うという生活を送っていたのですが、舞台のために1カ月半くらい東京に滞在したのをきっかけに、翌年上京することを決意しました。

転入した東京の高校には、仕事との両立を応援してくれる先生もいて、親元を離れて生活する僕にとっては心強い環境でした。特にお世話になったのが英語担当の先生。会うたびに「頑張っているな」と声をかけてくれるのが嬉しかったですね。

 上京したことで、仕事への取り組み方は大きく変わりました。東京に来て、それまで見えていなかったものが目に入るようになり、「この仕事を本気でやりたい!」と思うようになったんです。いい意味で自分を追い込めたというか、「簡単には帰れない」という危機感が、福岡にいた頃よりも真剣に仕事に向き合わせてくれたのかもしれません。

 

悩んだ末に大学進学を決意

 大学進学については、実はすごく悩んだんです。でも当時は、いまほどお仕事をいただけていなかったので、大学に行かなければ、家で過ごす時間が多くなってしまう気がして。それに何より、この仕事を続けていく上で、同年代の人たちと接することはとてもプラスになるんじゃないかと思ったんです。それでも一つだけ心にひっかかっていたのは、お仕事をたくさんいただけるようになった時に、大学に通えなくなってしまうかもしれないということでした。そんな時に両親が「辞めなくてはならないくらい仕事をいただけることはありがたいことだよ」と言ってくれ、その言葉に背中を押されて進学を決意することができました。

 それからは、芸能界の仕事に対して理解のある4年制大学の経営学部を目指すことに決め、スケジュールの合間に面接や小論文の対策を行いました。試験の合格を知った時はとても嬉しかったのを覚えています。

 

何がきっかけになるかは分からない

 もしもあの時オーディションを受けていなければ自分はいまごろ何をしていたんだろう。そう感じることがあります。特にやりたいことや夢があったわけでもなかった自分が、〝適職〟なのかもしれないと思える仕事に出逢えたのは本当に幸せなことだと思います。

 僕は、一見軽く見られがちな「やりたいことは分からないけどまずは大学に行ってみよう」という考えも、それはそれでいいんじゃないかなと思います。だって人生は、何がきっかけになって道が拓けるか本当に分からない。だから、一つの考え方に縛られ過ぎず、その時見たモノや感じたコトを大切にするほうが大事なんじゃないかな。高校生のみなさんには、部活動でも勉強でも、目の前のことに一生懸命になって欲しい。そうすればそれがアンテナとなって、きっと別の波を呼んでくれるのではないでしょうか。

 

なかむら・あおい

199134日生まれ。福岡県出身。現在、都内の4年制大学に在学中。2005年、「第18回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」において、コンテスト史上最年少の14 歳でグランプリを受賞。翌年、舞台「田園に死す」で俳優デビューを果たすと、その後、映画、ドラマ等に次々と出演。その活躍の場を広げている。


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