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〔第87号〕

2012/10/13

 厳しい残暑が続いている。額の汗をぬぐい、ふと視線をやると、うだるような熱風にたなびく白銀色のススキを見つけた。気づかぬ間に、季節は確実に移ろいを見せているようだ▼「幽霊の正体見たり枯れ尾花」ということわざがある。枯れ尾花とは、枯れたススキの古名のこと。一度猜疑心を持ってしまうと、たわいないものでも恐怖に感じてしまう心理を表している▼ススキは「害草」として、しばしば厄介がられている。根が強靭な上に葉が鋭いため、抜く時に手を切りやすいからだ。ススキの花粉は、秋季の花粉症を引き起こす原因でもあるそうだ。一方で、ススキの屈強な茎は古来より茅葺屋根の素材として重宝されてきた。秋の七草でもあり、中秋の名月のお供えとして、なくてはならない存在だ▼大学の夏季休業が終わると、ちょうどススキが風景に馴染む頃合いだろう。未内定の就活生が焦り出す時期でもある。活動が不調で心を病む学生の増加が問題視されているが、誰にでも輝ける場所はあるはずだ。それに気づかせる視点がいまのキャリア教育に欠けていないことを切に願う。今年の十五夜は9月30日。花屋に堂々と並ぶススキを、じきに見ることができそうだ。

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