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第4回 新制大学における単位制度設計の考え方

2013/01/29

大学改革の行方
新制大学における単位制度設計の考え方
清水 一彦

■1単位の考え方
 戦後の教育改革全体がそうであったように、わが国の新制大学における単位制度の導入についても占領軍、特にアメリカのCIE(民間情報教育局)の強力な指導と影響があった。C I E のE . ウィグルワースは、昭和22 年5 月の講演の中で、大学の単位算出基準については、アメリカのセメスター制の考え方を示し、15 週の1 学期を通じて毎週3 時間の学生活動を1 単位とした。この週3 時間については、それぞれの科目の性格に応じて異なり、数学などは授業1 時間に対して2 時間の家庭や図書室での自学自習、化学などの実験を伴う科目は授業2 時間に対して1 時間のノートの整理、そして製図などは3 時間の授業が考えられていた。例示された授業時間割では、伝統的な1 コマ( = 2 時間)講義の授業ではなく、実験を除き1 時間授業を週に何回か行うことが推奨されていた。
 1 単位時間については、CIEのW . C . イールズの講演から、1 講義の授業時間はアメリカ同様の50 分か55 分程度を1 時間ととらえていた。「日本における多くの大学においては2 時間を講義の単位としている。しかしこれは心理学的に面白くない。若い学生は1 時間以上講義を続ければ飽きてしまう」というのが理由であった。


■総単位数と科目配分の考え方
 卒業要件としての総単位数については、各学期15 単位、各学年30 単位、4 年間に合計120 単位というように考えられ、こうした学修量が「われわれが働き得る能力の水準」であることが一貫して強調された。 科目区分への配分については、ウィグルワースは一般教養科目と専門科目の比率をおよそ1:1とした上で、最初の2 年間は一般教養教育で最後の2 年間は専門教育という積み上げ(横割り)方式と、一般教養科目を年次進行とともに減じながらも4 年間にわたって設け、専門科目も2 年目から徐々に取り入れる相互乗入れ(くさび型)方式が挙げられていた。
 年次履修に関しては、後のCIE「大学教育改善に関する勧告」の中にアメリカ側の考え方をうかがかがうことができる。つまり、一般学生の1学期間の取得単位数は、新入生にあっては15 単位から最高16 単位に、第1年次経過後には特に優秀な才能の学生は18 単位までに制限することを勧告していた。また、通常の課程では、学生は1 週間につき平均45 時間の学修が求められるが、その時間の重要部分を学外のアルバイトに費さなければならない学生については、彼らが通常の大学課程の勉学を完全に履修するためには、4 カ年以上必要であるとした。これが「4 年以上」という修業年限の根拠にもなったのである。
 このように、1 学期16 単位は合理的限度を意味し、18 単位は週54時間すなわち1 日9 時
間の学習を予定してのことであった。



■新制大学の単位制度の出発
 単位制度の設計においては、CIEは単なるアメリカ方式の押しつけでなく、より広い視野と展望の上に立ってその意義を展開した。すなわち、統一的な単位制度の導入によって転校の道が確保され、ひいては国際間での転学の道が保障されるものであると説いたのである。そこには、旧制大学下での大学観や大学教育のあり方を厳しく批判し、その脱皮を強く切望する気持ちが十分に表されていた。
 こうしたアメリカ側の考え方や提案は、わが国でも比較的スムーズに受け入れられ、昭和22 年7 月8 日に制定された大学基準協会の「大学基準」に反映され、単位制度の成立をみた。しかし、そこには重大な事実が潜んでいたのである。
(次号へ続く)

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