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第8回 学歴社会における女性の教育

2013/12/11

学歴入門 真実と対応策

第8回 学歴社会における女性の教育

            橘木 俊詔


■戦後の学制改革
 高等教育ということに限定すれば、戦前の日本において女性は排除されていたと言っても過言ではない。ほんの2 ~ 3%の女性が旧制の女子高等専門学校に進学したに過ぎず、高等女学校が女性にとっては高等教育だったと言ったほうが良い。「女性に教育は必要ない」というのが通念だったのであり、背後には「良妻賢母」を理想の女性像とする思想が支配していたからである。女性は企業や官庁でキャリアを全うすることはなく、働くとしても農業や商工業で働くため、格別な技能を学校で蓄積する必要はなかったこともある。これらのことから、たとえ高等教育を受ける女性であっても、学ぶ科目として文学や芸術、家政学が中心であり、いわゆる職業に役立つ科目を専攻することはなかった。
 戦後の学制改革に注目して女性に関することを列挙しておこう。第一に、戦前では小学校を除いて男女別学であったが、小学校から大学まで原則として男女共学となった。第二に、とはいえ女子大学の存在は認められて、女子は共学大か女子大に進むかの選択に任された。高校においても私立高には男女別学が認められたし、北関東や東北地方の公立校においても男女別学の高校が存在した。第三に、高等教育機関として二年制の短期大学が設置された。設立当初は男子学生もかなりの数が在籍していたが、時の経過に応じて女子学生比率が高まり、現代では短大は女子向きというイメージが強い。第四に、新制大学では女性もあらゆる学部に進学できるようになったが、女性は旧制と同様に文学や芸術、家政に集中した。


■進学先が大学から短大へ
 戦後の女性の大学・短大進学率に注目してみよう。1960(昭和35)年では、大学にはわずかに2.4%、短大でも2.6%と女性の高等教育はごく一部に限られていた。日本の家庭がまだ貧困に苦しんでいた時代なのでやむを得なかった。ちなみに男性進学率も15.0%に過ぎなかった。
 日本が高度経済成長を経験して家計が豊かになると共に進学率は上昇した。1980(昭和55)年では女性の大学が12.3%、短大が21.0 % で合計33.3%。男性はそれぞれが39.3%と2.0%で合計41.3 %であった。特筆すべきことは、女性の高等教育進学率は高まったが、それは主として短大進学であったことだ。当時は「女性はせめて、あるいはせいぜい短大まで」という標語がよく用いられた。
 しかし、現在では女性の大学進学率は50%に迫っている。一方で短大はそのウエイトを低下させたので、女性の進学先が大学へとシフトしたのである。背後には、家計がますます豊かになったことに加えて、結婚後に夫に経済的に依存したくないという独立意識と、職業生活を全うしたいという女性の希望が高まったことがある。しかし専業主婦志向が根強く残っているのも事実だ。
 その証拠として、図1のように女性の専攻科目はまだ文学や芸術などに集中して、職に結びつく科目は多くない。しかし農学や薬学、社会科学などへの進出度が高くなっており、将来におけるキャリア志向は高まるだろう。そのためには社会は二つの対応策を取る必要がある。第一に、子育て支援策を徹底して家庭を持ちながら働ける女性を増加すること。第二に、女性は昇進に不利、女性にだけ一般職で働かせる、といった差別の撤廃である。

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