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第1回 使命も実態も変わった大学

2014/04/12

連載第1回 大学を変えよう!大学維新へ!

石川洋美

◆近代国家「大国日本」へ
 明治維新によって、日本の国が根本的に変わった。鎖国のために大幅に遅れていた近代化に向けて、西欧文明の急速な吸収とその活用を急がねばならなかったからだ。そのため新たな教育制度として全国津々浦々、山間僻地あます所なく小学校を作り、さらにその上に中学校・高等学校を作り国民の知的水準の向上を図った。
 この充実した教育制度を基盤に、日本の近代化、文明国家化をリードすべき人材の養成機関として東大を頂点とする帝国大学群が作られた。いくつかの私学もこれを追った。やがて、これらの大学で学んだエリートたちは期待通り日本を近代国家へと押し上げていった。そして日本は「大国」の仲間入りを果たしたのだ。この〝大国日本〞は、やがて国際競争の中に巻き込まれていく。そしてあの無謀な戦争……。

◆敗戦、そして新学制へ
 太平洋戦争の敗戦により、明治維新で組み上げられた教育制度は解体させられ、アメリカ型の民主的平等化方針によって組み直されることとなった。「6・3・3・4」の学制である。かつてエリート養成を掲げた大学も平等主義の中で次第に大衆化が進み、進学率も上がっていく。しかしその中でも進学目的は「エリートになる」ことであり、東大を頂点とする受験戦争はますます激しくなっていく。この段階でも、大学はあくまで「学問の府の頂点」であり、「権威ある象牙の塔」として君臨していた。
 この進学率上昇を受け、私立をはじめとして、大学が次々と新設されていく。やがて大学入学目的は「エリートになる」ことではなく、「良い会社に入り、良い給料をもらう」ことへと変容してきたのだ。進学者増加により大学は、大衆化からユニバーサル化へと進み、「エリートのための権威ある学問の場」ではなくなるのであった。

◆変わり始める大学
 大学のこの変化を受け、「学の蘊奥を究める」と高らかに謳い上げていた「大学設置の目的」は、「高度の専門職業人の養成」へと書き換えられた。中央公論誌2006 年2月号の特集テーマは「大学の失墜」として、「低迷する権威、進む就職予備校化」などの副題がついている。その記事の中には「大学転落物語教養の砦から若年失業者の収容所」とか「大学が気軽に消費される時代」などという、ひと昔前の大学人が眼を覆いたくなるような見出しが躍っていた。
 いま、大学進学者で「知の修得、学問研究」を目指すという者は皆無に近い。「知識はコンピュータでも得られる。まずは就職だ!」と言うだろう。かつては「大学にとって就職問題など外道だ」と横を向いた教員たちも、就職指導や就職の斡旋紹介などに狩り出される。カリキュラムなどでもキャリア教育が重視される。いまや大学は「就職予備校」ではなく「就職を目的とする教育機関」になっている。「学の蘊奥を究める」はもはや死語となったようだ。
 さらに、近年の少子化の連続は「大学余り現象」を出現させている。いまや「学生に来ていただく入試の始まり」( 中央公論2006 年2月)と言われ、易入学による学力低下が問題なっている。この変化に対応し切れない旧式教授の授業は学生とのミスマッチを呼び、彼ら・彼女らのやる気はさらに落ち込む。そして「知識の府大学」の価値はさらに下がる。「大学余り」は大学の倒産すらも呼び込む有り様だ。

◆大学維新へ!
 今日、大学の使命もその実態も変わった。しかしその変化に気づかず、「旧来の大学イメージ」で教育や運営がなされている大学が多い。この変化を確認せねばならない!そして「新しい大学づくり」を始めよう。幕藩体制から根本的に変わった明治維新のように、いま大学は根本的に変わらねばならないのだ!「大学維新」だ!

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