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第3回 大学維新だ!パラダイムシフトだ!

2014/06/16

連載第3回 大学を変えよう!大学維新へ!

石川洋美


◆「維新」とは根本的に変えること
 物事を根本的に変えるためには「パラダイムシフト(転換)」が必要だ。パラダイムとは、「ある時代に支配的な物の考え方、認識の枠組み規範」という意味である。
 明治維新における諸制度をみると、統治体制が幕藩体制から天皇親政体制へ、鎖国から開国へ、経済基盤が米の農業から貨幣の商業へ、士農工商の身分制度は解消など、いくつかの劇的なパラダイムシフトがあった。
 大学もいま、劇的に変わらなければならない時を迎えている。「知の取り込み、蓄積、創造の拠点」として、新時代をつくるリーダーの育成を目指して出発した大学は、時代変化の中で社会の要請の変化や進学率上昇を受けてユニバーサル化し、果たすべき使命も実態も急変している。まさに「大学のパラダイムシフト」が必要だ。


◆研究中心主義大学から教育機能重視大学へ
 日本の大学の原型は、ベルリン大学でのフンボルト改革(研究中心大学づくり)にある。その典型が東京大学である。各大学は東大を追って「研究中心のミニ東大」を目指した。しかしいま、研究機能は重要性を増し肥大化して、研究と教育の併存は難しくなった。このことは、すでに1971 年の「46答申」でも指摘されており、「大学の種別化」の一つとして研究と教育の分離が提案されている。この流れは、87年の「大学個性化、多様化提案」へと進み、さらに最近の国立大学改革案での「大学ミッションの再定義」へとつながるのだ。
 フンボルト型研究中心大学を転換せねばならない。「より深い研究の追求」と同時に「社会に貢献する人材育成」を強化せねばならない。併存は無理だ。研究と教育を分離しよう。すでに提案されている種別化による分離もある。あるいは学部は教育主、大学院は研究主という重層分離という方法もある。


◆個性値を持った、世界・地域に開かれた大学へ
 かつて脱偏差値入試案として「偏差値から個性値へ」という提案があった。これはいま、受験生に対してではなく、大学そのものに対して言える。
 近畿大学がマグロ養殖をきっかけに志願者を増やしたという。これこそが個性値評価だ。同様に、東大と異なる個性づくりを続けている京都大学(松本紘著『京大から大学を変えよう』)や金沢工業大学も有名だ。
 大学を偏差値序列で評価するのをやめ、個性で評価しよう。大学は標準型の出来栄えを競うよりも、ユニークな個性づくり、オンリーワン、ナンバーワンづくりを競おう。
 「大学のグローバル化」が求められている。学生・教職員、そして研究・教育活動の国際化が進められようとしている。留学生の送り出し、受け入れ、そして外国人教員率が日本の場合には世界水準と比べとても低い。この値についても高めよう。世界で戦える研究力の強化も必要だ。
 さらにいま、「大学の地域貢献」が求められている。文部科学省もCOC 事業「地(知)の拠点整備」として支援している。地域、企業などとの交積極的な連携・交流が必要だ。


◆「卒業」と「資格」を分離、「人物保証」と「学力保証」へ
 大学を卒業すれば同時に学士号を取得できる。これを「卒業」はその学校の教育理念に
よる「人物保証」を意味するものとし、「学力保証」は別途国家試験により図ることとする。そして、企業や大学院はこの「人物保証」と「学力保証」を踏まえて、独自の選抜方式により自らに相応しい人材の選択を行っていくということを提案したい。
 この考え方はSAT やACT、国際バカロレアなどのように高等学校修了時にも適用する。現在提案されている達成度テストもこの方向を目指しているようだ。
 かくして、大学のパラダイムシフトが一気に進行し、「大学維新」へと進むことを期待したい。

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