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若者の人間力を高めるための国民会議

2007/02/01

 東京で1月21日、「若者チャレンジ応援フェスタ」が開催された。「若者の人間力を高めるための国民運動」、通称「若チャレ」は、若者を取り巻くさまざまな問題に対して、企業や労働組合、学校、マスメディア、地域社会、政府等が一体となって、若者のサポートをしようという主旨で2005年にスタートした運動だ。

「若チャレ」では全国各地で、就労や修学に悩む学生、社会生活になじめない若者やその保護者を対象としたイベントを行っている。その一環として行われたフェスタでは、さまざまな立場の専門家や、今まさに第一線で働く経営者らが集まり、参加者にメッセージを投げかけた。

手を貸すのではなく、自力で解決させて

 第一部では、多くの保護者が放送大学の宮みち子教授の話に熱心に耳を傾けていた。宮本教授は「いまのひきこもりやニートといった若者が親元を離れられないのは、自活能力がないから。現代の子育ては将来子どもが独り立ちすることを見据えた教育になっていない。子どもたちは、親とは違う世代を生きていると言うことを意識しなくてはいけない」とメッセージを送った。

 日本女子体育大学の助教授でアーチェリー選手でもある山本博氏は、現場での指導経験から「悩んでいる子に対してあまり早くから答えを与えないこと。本人が悩んでいるなら、答えを見つけるまで、どれだけもう少し悩ませられるかが大事」と語る。 自立のサポートというと、どうしても手を貸すイメージがあるが、親や周囲が手を貸しすぎるのではなく、本人が自立できるような教育的指導や我慢がどれだけできるかということが大事だ、と感じさせる講演となった。

人のせいにしない、責任ある仕事を

 第二部では、パネリストに対して学生が質問を投げかける機会が設けられ、現在就職活動で悩んでいる学生たちから、鋭い質問が飛んだ。

早い時期の転職はどう思うか?」という質問に、株式会社リヴァンプ代表パートナーの玉塚元一氏は、「会社のせい、仕事のせい、商品のせいにするのではなく、自責人間であること」と応じた。法政大学大学院政策科学研究科の諏訪康雄教授も「どうしても合わない仕事や耐えられない仕事もあるだろう。しかし、どんな選択をするときも、常に前向きであることが大切」と、若者の安易な転職に対する警鐘を鳴らす。

また、「株の運用などで、楽をしてお金を稼ぐ若者をどう思うか?」といった時代を反映したような質問に、経済同友会代表幹事の北城恪太朗氏は「基本的に楽をして儲けることはできない。体力を使うか頭を使うかという違いはあるだろうけれど、努力なしには不可能です」としながらも、「楽しく仕事ができれば、無理がないという意味では楽でしょう。それはすごくいいこと」とフォローも忘れない。  三者三様の話の中で、共通していたのは「誠実に、責任感をもって働くことが何よりも大事」ということ。学生にも参加者にも大きなメッセージとなったようだ。

親自身の悩みを解放

 このイベントは、若者やその保護者が対象ではあるが、イベントを取り仕切る元気のいい若者の姿はあっても、参加者のなかに若い人の姿は少ない。 会場には若者の自立を支援したり、就労体験の機会を設けるNPO団体なども多く参加しており、講演の合間には参加者がそれぞれに相談を持ちかける姿が見られたが、そのほとんどが保護者と思われる大人だ。

若者自立塾の榎本竹伸氏は、「相談に来た親自身が、否定されない存在に初めて会った、と言う。親たちも、親として否定され続けている」と経験を語った。こうした団体は、若者はもちろんだが、若者を取り巻く親や周囲が抱いている誰にも言えない悩みを理解し、救う役割も果たしているようだ。

周りが悩み苦しんでいる状態では、若者自身をサポートすることはできない。全国で行われているこうしたイベントが、若者や親一人一人が自分の道を歩めるようになるきっかけとなることを願う。

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