「第114号」
2014/12/11
つい先日電池を取り換えたばかりだというのに、家の壁掛け時計が止まってしまった。故障か、とあきらめて外したのだが、ことあるごとに視線は時計があった壁のあたりをなぞっている。当たり前のようにそこにあったものが突然なくなってみて、ありがたさをしみじみと実感するのだと知った▼時間の捉え方は、哲学や心理学の永遠の命題だろう。ドイツにおける児童文学の傑作『モモ』に、「心が時間を感じ取らないような時はその時間はないも同じ」という一節がある。英語のことわざ「見ているヤカンは沸かない」は、心が感じる時間と実際の時間の流れとの違いを表しているのだと聞く▼年末独特の雰囲気に包まれる師走。「1年が長かった」と感じるか、「早かった」と思うか――。自分自身がどのように時間を過ごしてきたのかを知る、良いタイミングとしたいものだ▼翻ってセンター試験が刻々と迫ってきた。ある調査によると、国公立大・難関私立大の約3割の受験者が直前の1カ月に50点以上点を伸ばしているという。焦りや不安に自分の「時」を奪われ、「心」を支配されてはいけない。本来の実力を失わないように、一日一日を大事に過ごしてほしいと願う次第だ。
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