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「第116号」

2015/02/07

見なれたはずの通勤ラッシュの光景の中でも時として違和感を覚えるのは、スマートフォンを熱心に見つめる人の姿がとても多いことだ。偶然居合わせた周囲の人に対して無関心であるかのように振る舞うことを、社会学者・ゴッフマンは「儀礼的無関心」と名づけた。私たちは意識せずとも同調することを求められている▼目の前に行列ができていると、興味をひかれる人は少なくないだろう。長時間並んでから口にする料理は、いつも以上に美味しい気がしなくもない。行列をあえて意図的に作る「行列のマーケティング」を行うケースもあるのだと聞く▼進路選択にも同調行動はあるのだろうか。保護者を対象にしたある調査によると、高校卒業後の子どもの進路として「私立難関大学」「国公立難関大学」を希望する割合が5年前と比べ増えているという。「難関」であることの安心感が強まっているようだ▼大学がいま問われていることの一つは、学生の卒業後の人生を輝かせる力を持っているのかどうかだろう。右へならえで、偏差値のみで大学を選ぶ時代は過ぎ去った。進路選択においては「行列に並べば〝美味しい〞はず」と、安易な道を選ぶことがないよう祈る次第だ。

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