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「第120号」

2015/06/17

木々の緑が日を増すごとに深くなってきた。成長を促すかのようにしとしとと降り注ぐ雨に、今年も梅雨が来たのだと実感する。嫌われがちな季節だが、恵みの雨として心は潤しておきたいと思う▼蒸し暑くじめじめとしたこの時期は、ことさら物が腐りやすい。しかし、そうした風土を逆に活用して生まれたのが、日本が誇る発酵食品の数々だ。発酵食品と言えばおなじみの「納豆」は、豆を納めると書く。一見すると、豆を腐らす「豆腐」の方が意味合いは近いのではないかという気がするが、名前の由来は諸説入り混じっていて判然としない▼翻って「大学」の英訳はuniversity。「全体」「宇宙」「組合」といった意味を持つラテン語のウニベルシタス(universitas)が語源だと聞く。分解してみると、uni (=一つの)versus(=向きを変えた)と解釈できるのが興味深い▼いま、大学が〝職業で実践力を発揮できる人材育成〞という一つの方向へ進もうとしている。従来的な教養教育から職業教育へと向きを変えたと考えれば分かりやすいが、そう単純なことでは済まされない。大学が学生一人ひとりに進む未来を示すというのであれば、常に多様な可能性を与え続けて欲しいと願う次第だ。

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