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第6回 大学選択はどう変わるか(3)

2015/10/15

連載 社会の地殻変動と大学

第6回 大学選択はどう変わるか(3)

金子 元久

 前回までは、大学進学の制約、本人の意欲が大学選択にどう関わるかを考えてきた。今回は、大学の側の要因がどのような意味を持つかを考えてみたい。 
 日本の大学は、帝国大学をはじめとする国立大学、そして私立大学、旧制の専門学校に始まり、それらが戦後の新制大学を形成した。
 この中で日本の経済成長の中核的人材を作るものとして国立大学、特にその理工系学部に集中的投資が行われた。授業料の低廉さと産業構造との密接な関わりによって、資質の高い学生にとってはいわば国立大学が当然の進学目標となっていった。 
 他方で早慶や同立など戦前から一定の評価を受けていた大学は1960 年代初めにその規模(学生数)を拡大し、それに次いで60年代を通じて早慶に次ぐ中堅大学が急速に入学者数を拡大させ、またそれによって獲得した資金によって学部数を拡大させていったのである。さらにまたその次の世代の大学が同様に行動をとった。 
 これによって形成されたのが日本固有の一群の巨大私学である。これらの大学はその規模そのものによって、社会にその存在を認知させることができたのである。 
 他方で特定の学術分野(たとえば保健、芸術)、あるいは地域との関連を大学の理念としていた大学もある。いわばニッチ大学といえよう。 
 さらに80年代以降も、高校や短大を母体として多くの大学が設置されてきた。これらの大学の多くは大都市近郊や地方に置かれ、大学規模も小さい。
 このように90年以降は大学の多様性も進んだ。一般に威信の高い研究教育大学が多くの進学希望者を集める傾向は変わっていないが、受験生から見た位置が絶対的でなくなっていることは、入学者の中での浪人経験者の比率が着実に低下しつつあることでも明らかだろう。また国立大学の一部と、私立大学との差も少なくなっている。  
 この中で最も学生獲得に活力を示してきたのが中堅の巨大私学である。これらの大学は巨額の授業料収入をもとに、キャンパスの移転、次いではスクラップ・アンド・ビルドによる新学部の創設を果敢に行い、大学としての存在感を増してきた。 
 他方で中堅私学や、ニッチ型私学、新設私学の一部は、2000 年代に入って、入学者の確保に苦しみだした。こうした大学を中心として全大学の半分近くが、入学者定員を満たしていないともいう。
 ではこうした状況の中で、どのような大学を選ぶきなのだろうか。
 まず一般に、威信の高い大規模大学への進学にメリットがあることは事実である。名前が社会に認知されていることは就職や社会生活の中で一定の価値を持つ。また学術的な雰囲気の中で、学力や意欲が高い学生が周りにいることは重要な意味を持つとも考えられる。
 しかし私どもの行った調査(注)によれば、選抜性の高い大学での学生の学習時間は、それ以外に比べて実は大きな差があるものではない。 
 他方で、中堅や小規模大学の中には、熱心な教育を行っているところも少なくない。少人数の授業が多い、あるいは学生の学習時間が多い、といった大学はむしろこうしたタイプの中に散見される。
 もちろんこれは、小規模大学のすべてが良い、ということを示すものではない。しかし選び方によっては、最も自分の特性に応じて、自分を成長させてくれる大学は、むしろこうした大学から見つかるかもしれない。
 残念ながら、さまざまな「大学ランキング」や予備校の情報からだけではそうした大学を見つけることは難しい。一つひとつ、大学案内やウェブをていねいに見ていって、その中から、何かひきつけられるものを探しあてることが、大きなヒントに結びつくのではないだろうか。

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