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第69回 尚美学園大学 新学長 久保 公人氏

2016/07/18

新学長に聞く、これからの尚美学園大学
尚美学園大学 新学長 久保 公人氏





 
1926年に創立された母体法人の精神と歴史、そして伝統を継承しつつ、しかし同時に、常に時代の要請に応じた改革を断行しながら実践的な教育を実施しているのが尚美学園大学(埼玉県川越市)だ。4月1日、文部科学省スポーツ・青少年局長などを歴任した久保公人氏が新学長に就任した。久保新学長に密着し、同大の教育の歴史や今後の構想を聞いた。






芸術・文化・スポーツをキーワードに学生の総合力と専門性を醸成

―尚美学園大学の教育内容について教えてください。
 本学は2000年に4年制大学として開学しました。まだ若い大学ですが、学園としては90年におよぶ歴史を誇っています。「智と愛」を建学の精神とし、「勇気・創造」を教育の指針として、音楽・芸術・スポーツの分野において、他大学に先駆けた特色ある教育カリキュラムを展開して数多くの有為な若者を社会に輩出してきました。
 現在、本学が設置しているのは「芸術情報学部」と「総合政策学部」の2学部6学科です。 芸術情報学部では、音楽・芸術などの芸術文化について本格的に学ぶことができます。演奏や舞台表現などといったアーティストとしての技術指導にとどまらず、情報科学技術と音楽の融合による幅広い音楽教育が特長です。
 デジタル機器をはじめとする最新テクノロジーを駆使できる人材は、音楽業界から常に求められています。アーティストはもちろん、音楽プロデュースや楽器、芸能、マスコミ、教育機関といった、幅広い進路が開かれています。
 一方、総合政策学部では文化・スポーツ分野での実践力を身につけられるライフマネジメント学科と、公共政策・ビジネスマネジメント・情報コミュニケーションの学習ができる総合政策学科における深い学びを通し、幅広く社会で活躍できる力を醸成しています。

―教養と実践的なスキル、その双方を高めるカリキュラムが用意されています。
 教養教育と実学教育とのバランスを取っています。すなわち、高い専門性を損なわずに、それをどう社会に活かしていくかを深く考え、実践できる人材教育を重視しているのです。そのようなカリキュラムがあるからこそ、先行きが不透明だと言われる現代社会において「人間力」や「生き抜く力」をたくましく伸ばし、あらゆる分野で力を発揮することができる人材を社会に送り出すことができるのだと確信しています。

―ここ数年の取り組みについてご披露ください。
 昨年4月、「音楽応用学科」と「舞台表現学科」の2学科を新設しました。音楽応用学科では、音響クリエーターやサウンドコーディネーター、音楽プロデューサーなど、音楽シーンで活躍できる専門家を育成します。一方、舞台表現学科では、俳優やダンサーといった表現者から、舞台スタッフや制作スタッフに至るまで、多様な進路に進出できるよう教育を徹底しています。
 また、2013年には、それまで上福岡キャンパスにあった芸術情報学部を川越キャンパスへと移転・統合しました。これにより、他学部の授業や全学共通の教養科目をより自由に履修できるなど、一層横断的に学べる環境を整えることができました。深い教養を身につけたいと志向する向上心のある学生には、まさにうってつけの環境と言えるでしょう。

―キャンパスの環境整備には特に注力されています。
 学生が思う存分勉学に打ち込めるキャンパスであると自負しています。
 本学が位置する埼玉県川越市は、JR「池袋」駅から電車で一本という利便性の高い立地にあり、それでいて自然豊かな環境も兼ね備えている抜群のロケーションが自慢です。最寄りとなるJR・東武東上線「川越」駅からスクールバスで7分しかかからない上、広大な敷地面積と充実の設備を誇っています。“小江戸”の愛称で親しまれている川越市は、その名に相応しく江戸情緒があふれています。そうした周辺地域の中にあって、本学キャンパスは、円形広場を中心に近代的な建物が立ち並び、広大なテニスコートやサッカー場、最新鋭の音楽室やデジタル演習室、大規模なスタジオなどの各種施設を取り揃えています。
 落ち着いた雰囲気の中、時には芳醇な文化・歴史を持つ地域社会と関わりながら、奥深い教養と確かな専門性を磨くために、理想的な環境の実現に傾注してきました。



学生一人ひとりの好奇心を尊重実践教育にさらなる注力を

―学長就任までのご経歴をご紹介ください。
 文部科学省で、主として高等教育に関する事業に携わってきました。国立大学の予算の総括や認証評価の制度化、教育改革の推進のほか、私立大学に関する制度の整備など、学運営について横断的に経験を積んできました。また、理事として東京大学(東京都文京区)の運営にも参画しています。
 端的に言ってしまえば、文部官僚の視点で国・公・私立それぞれの大学運営に関わり、包括的な理解を深めてきたことが私のキャリアの強みであると考えています。そして、そうしたいくばくかの私の経験を基盤に尚美学園大の伝統と地域性を客観的に分析し、発展と繁栄に結びつくように力を尽くしていきたいと思っています。

―地域での産学連携にも辣腕(らつわん)をふるったとうかがいました。
 北九州学術研究都市の創設に、企画局長として携わりました。これは、北九州市立大学(北九州市)のほか、九州工業大学(北九州市)や早稲田大学(東京都新宿区)など、大学の研究機関や企業の産学連携センターなどを北九州工業地帯に誘致し、産・官・学が一体となってアジアの中核的学術拠点を設立し北九州市の産業振興の起爆剤にもしようという試みです。専門性が高い研究機関を誘致して教育産業の振興を図るためには、立地や予算などさまざまな条件をクリアすることが求められます。地域住民のみなさまや各大学・企業組織等と密接に関わり、個別のニーズを把握することも欠かせません。そうした状況下において適切なバランスを取りながら、より多くの人々にとって有為な学術研究都市の実現を模索してきました。手前みそな話ですが、この経験は尚美学園大の今後に必ずや活かされると考えています。
 尚美学園大は、地域社会とのつながりを大切にしてきた大学です。周辺を見渡すだけでも、地球環境保全の実践地域である川越市との産学連携や高大連携を数多く展開してきました。今後も地域において尚美学園大がさらなる存在感を発揮し、結果として学生が得難い経験を積むことができるように尽力していくつもりです。

―尚美学園大を、今後どのように発展させていきますか。
 まずは、学生の好奇心を満たすための仕組みづくりを推し進めたい。
 最も重視しているのは、学生が主体的に取り組むことができる授業の実施です。本学は参加型・課題解決型の演習(ゼミナール)を継続的に行っており、今後もさらに充実させていきます。1・2年次の「基礎演習」と、3・4年次の「総合演習」を段階的に行うことで、基礎から応用まで無理なく学びを深められるように配慮されています。そして、実践的な創造力や表現力、また教員と学生とのつながりによるコミュニケーション能力を醸成していきます。
 とりわけ2020年の開催を控えた東京オリンピック・パラリンピックは、「音楽・文化・スポーツ」について考える演習としては格好の題材となりますから、意欲的に取り上げていきたいと思います。
 講師についても、最前線の現場経験者をこれまで以上に積極的に招聘して、知識や技術・感性に磨きをかけることができるよう働きかけていきます。また、学生による授業評価アンケートの内容を学科全体で共有し、常により良い授業を実施できるようにキメ細かく対処していきます。実践的な授業の展開は、学生の好奇心と主体性を引き出すために必ず役立つことでしょう。

―高校生に向けてメッセージをお願いします。
 本学では学生が主体性を持ってチャレンジできる多様な教育環境を実現していますが、この背景にあるのは、教育の指針である「勇気・創造」です。あらゆる分野に「勇気」をもって果敢に取り組み、自ら新しいものを「創造」し、それを「勇気」をもって表現できる人材を育てることを目標とし、日々の改革に取り組んでいます。
 好きなことに向かって勇気を持って取り組みたい方は、本学はうってつけの環境だと言えます。多様な学びが用意されていますので、いま現在、将来の目標が決まっている人はもちろん、大学での4年間を通して「じっくりと将来を考えたい」という人にもぜひ飛び込んで来ていただきたい。
 音楽をはじめとする芸術に関する仕事に携わりたい人、地域社会・文化に関心がある人、スポーツに関わる仕事に就きたい人など、多様な学生がエネルギッシュに学んでいますから、必ずや素晴らしい刺激を得られることでしょう。私たちにお任せください。

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