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個人のステップを見つめた入門教育  東京電機大学

2007/03/26

 東京電機大学情報環境学部は3月2日、特色GPフォーラムを開催した。「学生の自主・自立を支援する個別重視型教育~これからの大学教育~」と題されたフォーラムでは、実学を重視する同大の初年次教育システムが紹介された。

 教育の中身は、プログラミングを学ぼうとする学生へ、学生の基礎学力、問題発見・解決能力、創造性などを育成するために作られたシステムだ。プログラムの基本に、教育心理学の観点を加えて、毎回学生の学習へのモチベーションを測定しながら、学生と教職員が一体となって取り組むというものである。

 このシステムでは、そうした観点から、学生が持つもともとの能力よりも、モチベーションを持続させることができる。意欲の低くなりがちな学生群には、「自分だけわかっていない…」というような不安を軽減するようフィードバックを行い、一方で「教えすぎない」よう気をつけながら、学生が自ら発見し、学ぶステップを尊重する。その結果、開始当初より、学生のモチベーションの低下率が下がったという。

 来賓講演を行った、立教大学大学教育・開発支援センターの足立寛氏は、大学において「学生間の意欲・能力格差」や「救えない学生の増加・大学側の対応の限界」が課題になっていると指摘した。大学の役割が多様化する中で、すべての大学で一部の研究的役割を果たす大学と同じような初年次教育では、とても対応できない現実がある。今後、学生をナビゲーションする教育的姿勢、また自分の居場所を確保できない学生への居場所の提供・意欲喚起が求められるという。

 同大の個々人に合わせたプログラムが、入門教育としてだけでなく、一つひとつのカリキュラムにも反映され、学ぶ中で学生自身が自ら学び、学びの理解、そして自信につながっていくことが期待される。



【東京電機大のシステムの秘密】
 同大は、2001年よりIT先進国であるフィンランドのロバニエミ大学との交流を通して、e-Leaningシステムを発達させてきた。同大のこうしたプログラムには、フィンランドとの交流が生かされている。今回のシンポジウムでも、GPの一環としてフィンランドで行われている教育の視察報告がなされた。

 周知のようにフィンランドは、OECD調査で、読解力世界1位、数学的能力世界2位となり、世界からその教育が注目されている。人口の希薄なフィンランドでは、遠方の者同士でも交流ができ、同じように学べるような仕組みがしっかりと整備されている。

 ITのことをIC(Communication)Tと呼ぶことにも現れているように、さまざまな大学が協力してインターネット上で講義が受けられたり、バーチャルで病院や公共施設の学びが可能になるなど、そのシステムの先進性は目をみはるものがある。

 同大の田澤義彦教授の発表によると、そうしたシステムに加え、限られた人的資源の中で教育を行うため、大学の講義では大枠を理解させるような仕組みがとられているという。細かな演習や実践問題などは、個々人のレベルに合わせて復習ができるようになっている。

 フィンランドのように人口が少ないこと、また国家をあげて学びを支援している姿勢など、日本ではまねすることが難しい部分も多い。しかし、そうした事例の有効な部分を少しずつ取り入れていくことが大切だ。同大の初年次プログラムでは、それを生かし、多様化しつつある入学者の入門教育に対応できるようになっている。

 

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