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第33号(平成29年1月31日発行)柔道男子日本代表監督 井上康生さん

2017/02/02

目標は高ければ高いほど、
達成に向けて努力できる


柔道男子日本代表監督 井上康生さん




























 2000年のシドニーオリンピックでは、男子柔道100キロ級で金メダルを獲得し、柔道家として最高の栄誉を手に入れる一方、昨夏のリオデジャネイロオリンピックでは、柔道男子日本代表監督として金メダル2個を含む7階級すべてでメダルを獲得するなど、男子柔道界復権の立役者となった井上康生さん。
 現在も柔道男子日本代表監督として指導に当たる傍ら、母校の東海大学では体育学部准教授として後進の指導に余念がありません。
 日本柔道界を牽引してきた井上さんを訪ね、これまでの人生を振り返っていただきつつ、高校生のみなさんに応援メッセージをいただきました。




●卒業後は東海大学に進学 4年次には五輪で金メダル獲得

 高校卒業後は東海大学の体育学部武道学科に進学しました。
 進学後も、高校時代と変わらず、学業と柔道を両立させる生活でした。その反面、部活動がオフの日は友人と遊んだりもしていましたので、いろいろなことを経験できた4年間だったように思います。
 その中でも特に印象に残っているのが大学4年生の時に出場した2000年のシドニーオリンピックです。私自身、人生最大の目標としていた大会でしたので、決勝で一本が取れた瞬間は言葉では表すことができないほどの喜びが込み上げてきました。オリンピックという最高の舞台が私自身を大きく成長させ、また金メダルを獲得したことによってその後もさらに飛躍することができたのだと思っています。


●リオ五輪では全階級でメダル獲得 男子柔道界を復権へと導く

 昨年のリオオリンピックでは金メダル2個を含む全階級でメダルを獲得することができました。全階級でメダルが獲れたのは、本当に選手が頑張った結果ですし、柔道界を支えてくれている大勢の方々のサポートのおかげだと思います。ですから、選手と支えてくれたみなさんには感謝の気持ちで一杯です。
 ただ、監督として選手の能力を見た時に「まだまだやれたな」と、悔いの残る大会だったのも事実です。幸いにも20年の東京オリンピックまでは監督を続けさせていただけるというお話をいただいています。「目標は高ければ高いほど、達成に向けて努力できる」がモットーですので、「全階級で金メダル獲得」という高い目標を掲げて、選手たちと一緒に戦っていく覚悟です。そして、柔道界だけではなく、スポーツ界全体で協力し合いながら、東京オリンピックを成功に導いていきたいと考えています。


●現在は東海大学の准教授として学生の指導や教育活動にも注力

 私は現在、週に6コマほど東海大学で授業を担当しています。
 主に柔道の授業と、オムニバス(教員が毎回、あるいは複数回に一回変わって、それぞれの専門分野について講義する)形式の座学を受け持っています。
 武道学科に入学した学生たちには、将来、柔道の素晴らしさをしっかりと伝えられる人材になれるよう指導しています。また、柔道は日本から世界的に発展した競技でもありますから、グローバルな視野も身につけるようにと伝えています。
 そして、東海大学は日本最大級の総合大学ですので、そのスケールメリットを十分に活用して、体育学に関する専門的な知識はもちろん、幅広い教養も身につけて、社会で大いに活躍できる人材に育ってもらいたいと考えています。


●覚悟と責任を持って進路選択を素晴らしい人生を歩んで欲しい

 高校生のみなさんは、これから自分自身の進路を決めていく時期に差しかかろうとしていますが、人生を左右しかねない重要な選択だけに迷うことも少なくないかもしれません。そうした時は周りの支えてくれる友人や先生、ご家族にアドバイスをもらうのも一つの良い方法だと思います。自分だけでは分からなかった新しい有益な情報やモノの見方が得られるのではないでしょうか。
 しかし、最終的に自分の人生を決めるのはみなさん自身です。強い意志がなければ、苦難・困難が立ちはだかった時には乗り越えることができません。逆の言い方をすれば、自分の進みたい進路をしっかりと見定めて、覚悟と責任を持った上で進むべき道を決定すれば、どんな辛いことが起きようとも、きっと対応することができるでしょう。それが若者の特権なのだと思います。目標が達成できるように応援しています。


いのうえ・こうせい●
1978 年5 月15 日、宮崎県都城市生まれ。柔道家。東海大学付属相模高等学校から東海大学体育学部武道学科に進学・卒業。大学4 年次当時の2000 年、シドニーオリンピック男子柔道100キロ級で金メダル。現在は、東海大学体育学部で准教授として教鞭を執る一方、柔道男子日本代表監督を務める。特に、16 年のリオデジャネイロオリンピックでは、金メダル2 個を含む7 階級すべてでメダルを獲得するなど、男子柔道界を復権に導いた。

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