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第73回 桜美林大学 第四代学長 三谷 高康氏
2017/07/19
「学而事人」の精神を大切に、これからも邁進
桜美林大学 第四代学長 三谷 高康氏
2019年4月に新宿区百人町、そして20年4月に町田市本町田に新キャンパスを開設予定の桜美林大学(東京都町田市)。「キリスト教精神に基づく国際人の育成」を掲げ、積極的な改革を断行する同大の三谷高康学長に、予定している大改革の詳細やどのような人材を育成していくか等についてお話をうかがった。
新宿百人町キャンパスを開設 芸術文化学群もリニューアル
―貴学は2019年4月に新宿百人町キャンパス(仮称)を開設します。その経緯や狙いについてお聞かせください。
本学は、東京都新宿区百人町に新しいキャンパスを開設し、ビジネスマネジメント学群と大学院の一部〔経営学研究科〕を移転する計画を現在進行しています。
本学の大学院は、桜美林大学の学生が多く進学するというよりも、独立系の大学院として出発し、社会人を多く受け入れてきた背景があります。2015年の前期までは四谷キャンパスとして四ツ谷駅付近を活用していましたが、駅前の再開発に伴い、千駄ヶ谷駅近くにひとまず移転をしました。その後も都心を中心にキャンパスの候補を探していたところ、国立科学博物館新宿分館があった新宿区百人町のエリアが活用できるということになり、ビジネス現場で役立つ授業を多数展開しているビジネスマネジメント学群と大学院の一部を移転させることになりました。
新宿は日本の首都・東京の中心的エリアですから、周辺には多くの企業が立ち並んでいます。その立地を最大限に活かして、企業と連携した課題解決型のインターンシップを行ったり、企業の第一線で活躍する講師を招いた講演会を実施したりするなど、実践的な教育を強化していくつもりです。
また、本学のメインキャンパスは町田にあり、学生の多くは東京と神奈川から通学しています。そして今回、新宿にキャンパスを開設するということで、埼玉・千葉・茨城・山梨・群馬の学生たちも通学圏内となり、学生の多様化が一層進むことが期待されています。
さらに、都心には多くの大学・短期大学がキャンパスを構えていますので、他大学の学生たちとの活発な交流によって、学生の視野が広がることも期待しています。
―来年4月には芸術文化学群もリニューアルするとうかがっています。
プロの世界の第一線で活躍する講師たちによって実践的な指導を行い、広い視野を持った次世代の文化を振興する人材を育成しているのが芸術文化学群です。これまでは「演劇」「音楽」「造形デザイン」「映画」の4専修でしたが、「演劇・ダンス専修」「音楽専修」「ビジュアル・アーツ専修」の3専修にリニューアルすることが大きな変更点です。
特に、「演劇・ダンス専修」では、演劇に加えて、徹底した身体基礎訓練から始まるダンス教育を充実させます。意外に思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、日本で最もダンス人口が多いのは実は「バレエ」なのです。しかし、バレエと言うと、どうしても「プロになること」を無意識のうちに目標としてしまい、多くの人が途中で挫折をしてしまうんですね。しかし、イギリスではバレエは広く社会に浸透しており、一般の人たちも趣味としてよく踊っているそうです。これはあくまで一例ですが、日本でもバレエをもっと一般化できるようなアイデアの考案や取り組みも授業の中で考えていければと思っています。
また、「音楽専修」は作曲やミュージカルなどの創造的分野を学ぶことができ、「ビジュアル・アーツ専修」は美術・デザイン、映像の枠を取り払い、視覚芸術の基礎から応用まで幅広く学ぶことができます。
加えて、芸術文化学群では、入学定員を現行の250人から400人へと大幅に増加させます。特に、2020年には町田市の本町田に芸術文化学群の新しいキャンパスをオープンする予定ですので、本町田を一大音楽・芸術拠点にできればと考えています。
グローバル・コミュニケーション学群 在学生たちの今後の活躍に期待
―貴学は昨年4月にグローバル・コミュニケーション学群を新設されています。1年以上が経過しましたが、手応えはいかがですか?
2016年は、桜美林大学が創立してからちょうど50年という節目の年で、周年記念の一環として立ち上げたのが、グローバル・コミュニケーション学群です。
現在は多くの大学が「グローバル人材」の育成に力を注いでいますが、本学群の最大の特徴は日本人学生と外国人留学生が同じ教室で講義を受講するという点です。
1・2年次は世界の中で必要不可欠とも言える英語と中国語を徹底的に習得し、3年次以降については政治・経済や法律・環境など、専門的な学問分野を英語や中国語で受講します。他の学群の授業は「外国語を学ぶ」のに対して、グローバル・コミュニケーション学群の授業は「外国語で学ぶ」という点がポイントです。
また、2年次後期もしくは3年次前期の海外留学を「必修」としていますので、世界というものを肌で感じる機会も用意しています。
指導に当たる教員については約半数が外国人で構成され、2カ国語を話すバイリンガル、3カ国語を使いこなすトライリンガルの教員もいます。現在は新設して2年目ですが、卒業後はステップアップとして海外の大学院に進学したり、国際機関で働いたりするなど、学生たちがグローバルに活躍してくれることをいまから大いに期待しています。
また、留学生についてもアジアを中心に積極的に受け入れ、キャンパス内のグローバル化をさらに促進させていきたいと考えています。
崇貞学園から数えてもうすぐ100年 世の中を変えていける人材を育成
―桜美林学園は2021年に創立100周年を迎えます。今後の学園経営の抱負をお聞かせください。
桜美林大学は1966年に創立しましたが、前身の崇貞学園は1921年に中国の北京に創立されました。ですので、崇貞学園から数えてあと4年で創立100周年を迎えることになります。
しかし、世界に目を向けてみれば、アメリカ最古の高等教育機関として知られるハーバード大学は1636年に創立されていますので、400年近くの歴史があるわけです。現在は大学全入時代と言われ、少子化の影響によって大学業界は厳しい環境に置かれていますが、大学というものは今後も200年、300年と続いていくものと捉え、長期的な視点を持って今後の学園経営に当たる必要があると考えています。
―貴学ではどのような人材を社会に輩出していきたいとお考えですか?
本学は、学んだことを人々や社会のために役立てる「学而事人」の精神を非常に大切にしています。これは本学園の創立者である清水安三が考案したものですが、含蓄のある素晴らしい言葉だと思っています。
2011年に東日本大震災が発生した際も、本学の学生たちは率先してボランティア活動に参加しました。そうした活動を通して、学生たちは大きな達成感を味わったことでしょう。本学の広告のキャッチコピーに「私が変われば、世界が変わる。」という言葉があるのですが、世の中を変えていける、もしくは支えていける人材を社会に輩出していきたいと考えています。そして卒業した学生たちが「私は桜美林大学に育てられたと同時に、桜美林大学を育てた」と思ってもらえるよう、教職員も一緒になって何事にも果敢にチャレンジしていきたいと考えています。
―高校の先生方にメッセージをお願い致します。
高校の先生方には、生徒の進路指導をする際に、さまざまな視点から志望校や受験校を決めさせて欲しいということをお願いしたいです。
日本の高等教育は、偏差値至上主義が浸透しており、偏差値が高いから良い大学、低いから良くない大学というような風潮がどうしてもあります。
しかし、大学の評価は予備校が出した偏差値によって決まるものではなく、教育内容や目指すべきビジョン、手厚い支援体制、さらには卒業生や社会とのパイプの太さなど、さまざまな要素が複合的に絡み合って決まるものだと思うのです。
ですから、そうしたさまざまな視点を持って進路を決めていくことが、入学後のミスマッチの減少につながると私は考えています。
また、学びたい学問分野がまだ決まっていない高校生の方々も当然いると思います。しかし、本学にはリベラルアーツ学群という広大な学問領域をカバーした学びがあります。また、ビジネスマネジメント学群、健康福祉学群、芸術文化学群、グローバル・コミュニケーション学群といったその他の多彩な学びもありますので、本学であれば大学四年間の中できっと自分に合った学問と出合うことができるでしょう。
新しいキャンパスを整備するなど、積極的な改革を続ける桜美林大学に、今後もぜひ期待していただければ幸いです。
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