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福永 栄一大阪成蹊大学 現代経営情報学部 准教授
fukunaga@osaka-seikei.ac.jp
- 略歴:
- 昭和35年山口県生まれ
- 昭和59年3月静岡大学理学部物理学科卒業
- 昭和59年4月:商社に入社
- 14年間情報システムの開発・運用を手がける。
- 平成15年4月:青森大学経営学部講師
- 平成18年4月:青森大学経営学准教授
- 平成20年4月:大阪成蹊大学准教授
- 昭和59年3月静岡大学理学部物理学科卒業
- 資格:
- 中小企業診断士、ITコーディネータ・インストラクター
- 公職:
- 青森地方最低賃金審議会委員など
- 著書:
- 環境会計と情報開示(平成12年11月、税務経理協会)
中小企業の国際化と海外進出(平成14年6月、中小企業診断協会)いずれも共著 - 受賞:
- (社)中小企業診断協会主催‘05「中小企業経営診断シンポジューム」で、「携帯電話での出席管理システム」の導入事例を発表した論文で、中小企業庁長官賞(最優秀賞)受賞
出欠確認の教育効果(2)
2007/09/03
<連載第2回目>
教育改革における、大学授業での出欠確認の位置づけ
大学生の学力低下が問題になっている。「九九が出来なくても大学に入れる」といわれる時代である。大学は受入れた学生の学力を、卒業までに向上させなければならない。そのために、教員が講義を行い、学生が予習・復習をする。歴史を1千年さかのぼっても、この方法に大きな違いは無い。学力向上のスタートは講義であり、最も重要なのも講義である。しかし、これらは学生が授業に出席することを前提とした方法であり、学生が授業に出てこなければ全く効果が無い。
1.これまでの大学授業での出欠確認の位置づけ
高校生であれば学校を休むことを社会的“悪”に位置づけられ、何が何でも学校に行かされる。しかし、大学生が授業を少しぐらいサボっても社会は寛容である。社会は大学生を大人扱いし、「自主的に勉強する」ことを重んじてきた。なぜ、高校生と大学生ではこれほどまで社会の扱いが違うのであろうか。それは、1877年(明治10年)に唯一の大学として設立した東京大学以来、大学生が優秀だった時代が長く続いたからではなかろうか。当時はもちろんであるが、1960年(昭和35年)でも大学と短大合わせた進学率は10%程度であった。10人に1人しか進学しなかったのである。天才とはいわないまでも、非常に優秀な者しか進学しなかったはずである。高校で苦しい勉強を続けた生徒、勉強が得意な生徒が進学していたのだから、自主的に勉強するだろうと考えたのであろう。
文部科学省HP 学校基本調査速報 -平成19年度- 参考資料
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/001/07073002/007/ssh18.xlsより作成
彼らなら、少しぐらい授業を怠けても、後から挽回できたかもしれない。仮に挽回できなくても、単位さえ取って卒業すれば、間違いなく日本に貢献できる1人となったはずである。非常に乱暴な言い方であるが、高校を卒業した時点で10人に1人の学力を有しているのだから、大学で勉強しなくても社会に出れば優秀には変わりなかったのだ。だから大学では出欠確認はあまり重んじられることがなかったのであろう。
2.これからの大学授業での出欠確認の位置づけ
しかし、2005年(平成17年)には大学と短大、専門学校を合わせた進学率が75.4%に達し、勉強が得意でない生徒も進学する時代になった。大学全入時代と言われ、大学を選ばなければ希望する生徒は全員進学できる時代になろうとしている。進学率が7.5倍になったのだから、高校生の10人に1人しか入学しない時代から7.5人が入学する時代に変わったのだから、大学も変わらなければならないはずである。大学での教育改革、大学授業の改革が必要である。私はその方法として、出欠確認が有効だと考えている。学生の自主性を重んじつつも“ゆるやかな強制力”である出欠確認を実施することで、授業への出席を促し、学生に勉強してもらうことが目的である。良い授業を行うことで、学生の出席を促すのは当然であるが、それだけで現代の全学生の出席率を高めるのは不可能である。学校を休みがちな学生に「休んではいけない、遅刻してはいけない」と、真面目な学生に「いつも頑張ってるね」とメッセージを送るのが出欠確認である。
3.出欠確認による教育改革
私は出欠確認により、大部分の学生の学力を向上させることができると考えている。授業は聞かないより聴いた方が良い、聴いた方が学力も向上するのは明らかである。これが出欠確認による教育改革であり、その効果である。しかし、改革の実現には、多大な努力と労力が必要であり、それが継続できないために挫折することが多い。事実、従来の方法では、正確に出欠確認を行うためには多くの時間が必要である。だから、出欠確認が教育改革につながらない。
しかし、青森大学の携帯電話での出欠確認は僅か1分の努力と労力で実施できるので、効果に結びつけることができる。学生の携帯電話を活用することで、低コストで、代返を防止し、簡単、効率的に出欠確認ができるシステムを独自開発した。具体的には、①学生に携帯電話で出席登録のWeb画面にログインさせ、②教員がその場で思い付いた一桁の番号を学生に選択させ、③教員の指示で全員同時に登録させるのである。このシステムを使えば、学生が50人でも200人でも僅か1分で出欠確認ができる。事実、青森大学では2005年度4月以降今日まで3年間、全学部・全授業で使い続けている。私は授業開始直後に出席を、後半に遅刻を確認している。これを続けるとチャイムがなる前に学生が来るようになる。出席率を向上させ遅刻を激減させるのが出欠確認である。学生に1分も欠けることなく授業を聴いてもらえるのである。
その効果を認められて、本年度から大阪電気通信大学でも使われている。テスト導入が終わり、本番導入を検討している大学、10月からテスト導入する大学もある。教育改革の目的は学生の学力を向上させることである。そのために、全国の大学で出欠確認に取り組めば、短期間で効果を引き出せるはずである。
これまでは、効果的に出欠確認を行うことができなかったが、学生の携帯電話を活用すればそれが実現できるようになった。次回は、これを実現した技術やシステムの構築思想などを報告させていただく。
(次回に続く)