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第1回 コロナ時代の日米韓台の大学教育❶

2021/06/15

連載 2040年に向けての大学教育

第1回 コロナ時代の日米韓台の大学教育❶

山田 礼子

 グローバル化の進展に伴い、近年、日本および世界の大学にとって「キャンパスの国際化」は大きな目標とされてきた。留学生の受け入れ、自国大学生の海外への送り出し、海外研修プログラムの構築など、多くの国々は国際化を促進するさまざまなプログラムを開発してきた。また、近年OECDやアメリカ大学協会(AAC&U)等さまざまな機関が、各国の教育システムの独自性を超えて、多くの国々が大学教育を通じて共通して学生に習得させるべき学修成果として「異文化に関する知識」「多文化共生という価値」「多様な人々との協働」等に象徴される「21世紀型教養」を提唱してきた。筆者はそうした21世紀型教養をグローバル・コンピテンス(以下、GC)とみなし、多様な人々と議論・協働して問題を発見、論理的に思考・解決し、活用していくスキルと定義し、国際比較を行ってきた。GCは、コロナ禍以前には、国境を越えての国際間での自由な移動を前提とするさまざまな学生の海外での移動を前提として大学教育を通じて獲得されるものとされてきたが、新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)が世界中で拡大し、WHOが2020年3月11日に世界的流行としてパンデミック状態であることを宣言して以来、世界中の高等教育機関がCOVID-19の大きな影響を受けている。コロナ禍以前と以後では、人間が近年作り上げてきたさまざまなシステムや時代の変化に合わせて創造してきた価値観やパラダイム自体が、世界規模で変容する可能性もある。
 コロナ禍とポストコロナの社会変容は、グローバル化を起因とする現象の一つでもある。世界中で、高等教育段階でのオンライン教育はこれを機に一気に広がり、大学教育の在り方にさまざまな可能性と示唆を与えている。今回と次回の2回にわたって、コロナ時代における大学教育を通じてのGCの修得状況を国際比較調査をベースに検証し、大学教育の在り方と方向性を考察してみたい。
 対面式で行われてきたGCを醸成する大学教育や海外留学、海外研修プログラムが、コロナ禍以降これまで同様に機能を果たすことが可能かを検証する。コロナパンデミックの制圧にかなり成功した台湾、必ずしも成功していない米国、両者の中間にあると思われる日本および韓国を比較する枠組みを設定し、分析する。調査は、コロナ禍に大学に入学した日米韓台の新入生を除く大学2年次生から大学院生までを対象に、2020年9月〜10月下旬の期間にウェブ上で実施。4カ国・地域とも全国規模で行われ、回答者は3296人だった。
 今回は各国のコロナ後の授業形態について見てみよう。コロナパンデミックの制圧に成功している台湾においては、小規模、中規模、大規模、実験・実習を伴う授業、演習といった授業形態において26%から50%を超える割合で完全に対面式で実施され、オンライン式(完全とほぼを含む)は高くても大規模授業の35%程度である。一方、米国では、いずれの授業形態においても、オンライン式(完全とほぼを含む)が60%程度であり、対面式が低い割合であることが示されている。韓国では、米国以上に対面式授業のデリバリー状況が低く、オンライン式のデリバリーが高い。日本においては、完全にオンライン式の授業のデリバリーは講義系で韓国と同程度となっており、授業規模が小さくなるほど、オンラインのデリバリー率が低下している。韓国の状況と類似しているが、日本の場合、韓国よりも対面式の実施が多く、実験・実習や演習を伴う授業では2〜3割程度となる。
 では、コロナ禍以前と以後の各国のGCの修得状況およびグローバルな事象への関心はどうだろうか。また、オンラインや対面型授業との関係はあるのか。次回はこの点をデータから見てみる。




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