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第5回 大学教員の役割分業(上)
2025/10/10
連載 関係性から考える大学のアレコレ
第5回 大学教員の役割分業(上)
佐藤 万知
そのような実態の中で、「自分は本当に大学教員と言って良いのだろうか」という葛藤を抱く大学教員が多くいることが研究では指摘されている。研究がおもしろく、新しい発見をしたい、そのおもしろさを他の人にも知ってもらいたいと思って大学教員になったはずが、何年頑張ってもそのような風に働くことができない。私の友人にも「研究をやらなければと思っているのだけど、時間が全然なくて、結局何もできていないことがずっと引っかかっている」というようなことを話す大学教員は少なくない。
より深刻なのは若手教員で、包括的な大学教員の働き方ができていない上、任期付きのポストなどにいる場合だ。現状の雇用では、研究しか職務がないのに教育活動の経験がないと次のポストを探すことができないということもあれば、教育ばかりで研究時間が確保できないのに契約更新の評価では研究業績を求められるなど、現実的な問題に直面している。このような状況が続けば、長い時間をかけて学位を取得し、大学教員になろうと考える人は減っていくのではないだろうか。
このような懸念を背景の一つとして、役割分業することで大学教員の働き方を明確にする取り組みがオーストラリアやイギリスなどで進められている。アカデミックポストを教育研究専任、教育専任、研究専任、そして場合によってマネジメント専任というように分類し、それぞれにおいて職務内容、評価の仕組み、キャリアパスを制度化するというものだ。例えば、教育専任の場合、職務活動時間の60%程度を教育活動、30%を管理運営等、そして残り10%を研究活動に充てるような働き方となる。ただし、ここでの研究活動は専門分野での学術的研究ではなく、専門分野の教え方に関する研究を意味する。教育活動には、授業だけではなく、教授法や教材の開発、カリキュラムのコーディネートなど多様な職務が含まれる。教育専任教員として、助教、講師、准教授、教授と昇進することが可能で、昇進要件も設定されている。給与にも大きな差はない。教育専任の人に話を聞くと、「好きな教育に専念していてもちゃんと評価され、昇進できるのは嬉しい」という声もある。
このような制度の話を日本の大学教員にすると、一番多い反応が「研究がおもしろくて大学院に進学するのに、どのような人が教育専任教員の道を選ぶのか」だ。その次に問われるのが「基礎的な科目は担当できるかもしれないが、専門を教えることはできないはずだ」ということだ。教育と研究の両方を引き受けるのが大学教員の仕事だという強い職業観と、大学教育は学習指導要領や教科書がある高校までの教育とは違うという教育観が根底にあることが分かる。大学教育を大学教育たらしめているのは、研究をする大学教員が教育を担うからなのか。学生にとって、違いは経験されるものなのか。次回、考察を深めていく。
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