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第34回 大原大学院大学 青木 靖明学長インタビュー

2006/10/25

 今回のインタビューは大原大学院大学(東京都千代田区)の青木靖明学長。最近では大学院の入学者数が増え、2006年度の学校基本調査でも学生数は27年連続増え続けている。文部科学省の法科大学院を含む、専門職大学院への政策が成功にあるという。

  一般の大学院と専門職大学院との違いから、一般の大学から大学院に進むルートだけではなく、大原学園が提唱する「6年間一貫教育」という新たな教育ルートについての話をうかがった。

変わりゆく大学、短大 -21世紀の展望

会計プロフェッションを育てる会計専門職大学院

会計プロフェッションの条件

公認会計士、税理士、ファイナンシャルプランナー等の資格を取ることです。

なぜなら資格を取らないと会計プロフェッションとして認めがたいからです。

一般の大学院と専門職大学院はどこが違うのか

本紙 最初に、一般の大学院と大原大学院大学のような専門職大学院との違いについてお尋ねします。

青木靖明学長(以下敬称略)一般の大学院は、学術の理論及び応用を教授研究してその深奥を究めることを目的としています。

  ところが時代が求める高度専門職業人の育成も必要と考え、平成14年の臨時国会で学校教育法を改正して専門職大学院の設置基準を定めました。

  そして現在では、法科大学院や会計大学院という高度な専門能力を要する分野の大学院が開校しています。

  またこれらの専門職大学院修了者に対しては、第三の学位として専門職修士が授与されます。

本紙 そうすると、いままでの大学院は学者を養成する場で、専門職大学院は実務家を育てるためにできた制度ですね 。

青木 その通りですが、専門職大学院においては国家資格を取得するための受験技術優先の教育は慎み、学術と実務教育の架橋となる教育を志します。ですから、博士になるほどの学問の探究より実務家としての高度な素養を育成します。

本紙 近年、大学院へ進学する学生が増えていると聞きますが、その理由は何でしょうか。

青木 大学を出て妥協的に会社へ就職するよりも大学院でさらに能力をつけ、一段と高い就職の道を望むからではないでしょうか。

  そのとき専門職大学院というのは非常に有効的だと思います。

本紙 学問の研究と実務教育は確かに別のものですが、それを一体化する教育は本当に必要なことだと思いますね。

青木 今まで学術の研究と実務能力の架橋となる教育機関はなかったのですが、社会が高度化し複雑化・グローバル化してきたために求められた、非常に素晴らしい制度だと思います。しかし、これが机上の空論にならなければいいがと心配しています。

経済系大学・ビジネス系大学では資格取得教育はできない

本紙 というのは何ですか。 青木 専門職大学院は高度な専門性を担うための深い学識と、卓越した専門能力の育成を目的としています。

  ところが、専門職大学院での学習期間は2年間なので、その短い期間に卓越した専門能力を身につけることができるかどうかが一番心配です。

  そこで、4年制大学と専門職大学院が一貫教育を構築し、専門能力を育てれば理想的人材が育成できると考えました。 本紙 それでは大学においても、実務能力の育成に力を入れるようにすればいい訳ですね。 青木 言うは易く行うは難しで、実務能力を第三者に端的に示す方法として「資格取得」があります。

  しかし、その資格を認証するところは、文部科学省以外の省庁が多いのです。

  例えば、建築関係は国土交通省、医療福祉系は厚生労働省、経理税務系は金融庁、財務省、運輸系は国土交通省等々です。

  そして、日本の教育観では資格取得の教育は学問ではなく、受験技術の修得であり、大学教育としては受け入れにくいし、大学教授の学問研究としての範疇には入らないようです。

本紙 結局、大学では資格取得教育は難しいということですか。

青木 理工系とか医学系の大学では、専門能力を付与するために教育が行われていると思いますが、経済系・ビジネス系の大学には、資格取得に的を絞った大学はありません。

  また経済学部や商学部・経済学部などに入学して来る学生の目的は千差万別なので、特定の資格取得のための教育はできないと思います。

  結局、大学教授は学問の研究が主な仕事なので、資格を取るための講義は目的外のものとなり、正規の授業には取り入れにくいのです。

  大学のゼミなどで若干資格取得のための指導をしていますが、高度な資格は狙えません。

本紙 大学で行っている授業が、実務で直接役立っているかどうかが問われる時代になったところに問題がありますね。

青木 大学に入学する目的は多くの知識を得て、ゼネラリストになるためですが、そのような目的意識を持たず、ただ「高校卒業後は大学生になる」という付和雷同的な日本の教育観が、若者の将来を誤らせているのかも分かりません。もっと目的意識の持てる教育が必要です。

本紙 昔、大学生は選ばれた人だから価値がありましたが、大学全入時代の現在では、誰でも大学に行けるので社会的評価も変わってきますね。

青木 ですから、資格を取って就職に備えようとする賢明な大学生は、大学に籍を置きながら、他の塾や専門学校に行って資格を狙い、努力することになるのです。

本紙 いわゆるダブルスクール族ですね。授業料の二重払いでもったいない。

青木 大原簿記学校にも、一流大学の学生が公認会計士や税理士を狙ってダブルスクール族になって大勢通学しています。この無駄を省くために、大原では4年制本科(会計士コース)を設置しています。これは4年制大学に準ずるコースです。

4年制大学に準ずる大原簿記学校4年制本科

本紙 4年制大学に準ずるものとはいえ、専門学校ですから、日本の教育観では低く見られます。

青木 ところが学校の制度も大きく変わって、大原簿記学校4年制本科を卒業すると「高度専門士」という称号が与えられ、大学院へ進学することができます。ですから4年制大学に準ずると表現したのですが、それどころか、職業能力を身につける面においては、完全に大学を凌駕していると言えます。

【参考】学校教育法第70条(抜粋)大学院への入学に関し大学を卒業した者と同等以上の学力があると認められる者……5、専修学校の専門課程(修業年限が4年以上であること……中略)

本紙 大原簿記学校の4年制本科(会計士コース)の特徴についてお聞きしたいのですが。

青木 先ほど述べたように大学は、目的がさまざまな学生でクラス編成していますが、大原簿記学校4年制本科(会計士コース)は、公認会計士になりたいという学生だけが集まってクラス編成しています。

  ですからカリキュラムは目的科目に集中して設定されることになります。その結果、目的意識をしっかり持った授業が行われるので、やる気が喚起されて、非常に張りのある効率の良い授業が展開されるのが特徴です。

本紙 資格取得教育だけでは、全人教育ができないのではないでしょうか。

青木 それはまったく心配ありません。いくら資格を狙って学習するといっても学校ですから、礼節\コミュニケーション能力\社会一般常識\会計人としての倫理\就職対策などについて授業があるのは当然です。

  逆に大学のように多科目を教えるから全人教育ができると既成概念で物事を考えるのは、早計ではないでしょうか。

本紙 就職対策などもしっかり指導されているようで安心します。

青木 英語の得意な人は大学の英文科へ行くよりアメリカのCPA(公認会計士)を狙って勉強する方が実践的で、外資系の企業へ就職する道も開けます。

会計プロフェッションになるための6年間一貫教育

本紙 高校の先生方も資格取得の必要性は充分ご理解いただけると思いますが、やはり専門学校卒業というところに一抹の不安を感じますが。

青木 「資格を取れないときはどうするか」とか、「大学くらいは出ておかなければ」と考える人は大勢いると思います。しかし大原簿記学校の4年制本科は、たとえ資格は取れなかったとしても就職対策は万全を期しますし、大原大学院大学へ進学する道も開けます。基礎能力は充分についているので、会計修士という学歴とともに、会計プロフェッションの誕生も夢ではありません。

本紙 なるほど。大原の4年制本科を卒業したあと、大原大学院大学で2年間教育を受け、会計プロフェッションになる教育ルートですね。でも、高卒後の6年間は長すぎる気がしますが。

青木 以前は2浪3浪は当たり前でした。そのことを考えれば、高卒後の6年間一貫教育は決して長くありません。特に65歳定年制ともなれば25~6歳で就職することが当たり前になります。

本紙 ところで、公認会計士の受験勉強は、そうとう難しいと聞いていますが。

青木 公務員上級職試験と司法試験と公認会計士試験が3大難関試験と言われています。ですから早期受験対策が必要で、大原の実績による指導を受ければ合格の可能性は大きいと思います。

本紙 本日はいろいろとありがとうございました。

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