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【第54号】

2008/09/01

 「子曰はく、苗にして秀でざる者あるかな。秀でて実らざる者あるかな」『論語』の孔子の言葉である。苗を見ると、穂を出すことが当然のように思うが、往々にして穂がでないものもある▼先日、17日間にわたる夏季五輪北京大会が閉幕した。43もの世界記録が誕生し、盛り上がった大会だった▼日本人選手も健闘した。競泳平泳ぎで2大会連続二冠を達成した北島康介選手。100メートル決勝後には、「なにも言えねぇ……」と、言葉を詰まらせながらもコメントした姿は記憶に残った人も多いだろう。北島選手のように穂を出した選手もいれば、そうでなかった選手もいる▼前大会で金メダルを獲得し、今大会でも期待されていたハンマー投げの室伏広治選手。残念ながら、メダルには届かなかった。競技後、「4年間が凝縮された1時間だった」と語った▼きっと悔しさはあったはずだ。4年間のトレーニングは過酷なものだっただろう。わずか1時間の競技で決着がつくハンマー投げ。メダルが取れなくても、言い訳せず、納得した表情で語っていたことが印象的だった▼受験勉強も同じことだろう。決して楽しいものではない。努力したからといって、希望通りにいかないこともある。悔いを残さないためにも、凝縮した時間を過ごすことの大切さを五輪は教えてくれた。

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