【第57号】
2008/12/01
「ひとさじの しあわせそっと 抱きしめて 強くやさしく 生きてゆきたい」▼神戸大学4年生のさつきさんが作った短歌だ。出版甲子園という本にしたい企画をプレゼンテーションするイベントで、この短歌を披露した。プレゼンの冒頭で「スプーンフルハピネスという言葉を知っていますか?」と聴衆に問いかけた▼文字通り、「スプーン一杯の幸せ」という意味。今ではさつきさんの座右の銘ともなっているが、この言葉に出会う前に悲しい出来事があった▼さつきさんが大学2年生の夏休み、何げなくエレベーターに乗っていたときに、性的被害にあった。以来、心的外傷後ストレス障害を抱え、現在も投薬治療中だという。だからといって、さつきさんは悲観的には感じていない。「かわいそう」と思わないでほしいという。「ただ、やさしく温かい気持ちを届けたいだけ」と、前向きに生きている▼金融危機、元厚生事務次官ら連続殺傷事件など、幸せでないニュースが多い昨今。こんなときこそ、ささやかな幸せの存在がほしい▼誰にでも当てはまる言葉「スプーンフルハピネス」。暦も師走となり、何かと忙しくなる。受験生も受験シーズン真っただ中で、余裕がなくなりがち。「学校の帰りに、きれいな星を見た」でも何でもいい。頭の隅にでも残してほしい言葉だ。