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【第60号】

2009/03/01

 「死ぬということは、楽に寝そべっていてできるわずかな事柄のうちのひとつである」。米国を代表する映画監督で、アカデミー賞受賞監督でもあるウッディ・アレンの言葉である。「死とは何か」と問われたとき、どう答えるだろうか▼悲しく、時にはユーモアを交えながら死生観を描いた映画「おくりびと」に、米国の映画の祭典・アカデミー賞外国語映画賞が贈られた。受賞後、滝田洋二郎監督は「死を描いているようだが、実はどう生きるかという作品」と説明した▼死は、入試でも問われる。竹内康浩さん著の『東大入試 至高の国語「第二問」』(朝日選書)では、日本最難関と称される東京大学の入試に死を扱った出題が多く、受験生を悩ませていると紹介されている▼受験生の多くは成人にも満たない18歳。そんな受験生が日常とかけ離れた入試問題に挑まされる根底には、考えに考え抜いたときに、一筋の光明を見いだしてほしいという意図が隠されているのかもしれない▼真剣に考えることは意外と難しい。死でなくてもいい。例えば抽象的な彫刻作品を見たときの反応でもいい。「訳が分からない」と考えを拒否するのなら、それは何も考えていないことと同じ。そこには作者からのメッセージが必ず存在する。一致しなくても、考えを巡らせることが大切だ▼死は誰にでも与えられた平等なもの。目をそらすこともできないし、死に向かって生きているという矛盾も抱えている。だからこそ、満足した人生を送りたい。勤労観育成のキャリア教育が盛んに行われているが、死ぬまでの一生を視野に入れた教育ならば、究極のキャリア教育となろう。

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