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第51回 学校法人ヤマザキ学園 山﨑 薫 理事長
2010/02/01
山ú± 薫(やまざき かおる)
サンフランシスコ州立大学芸術学部卒業
麻布大学大学院獣医学研究科 動物応用科学 修士課程修了
同博士課程修了 博士(学術・動物人間関係学分野)
日本初の動物看護学部 ヤマザキ学園大学開学
2010年4月、日本初の動物看護学部を持つヤマザキ学園大学が開学する。同大の概要について山ú±薫理事長に話を伺う。
(インタビューは2009年12月17日)
―動物看護学部を持つ大学を開学する背景は
学校法人ヤマザキ学園は1967年の創立以来、一貫して動物に関わる人材養成に携わってきました。特にコンパニオンアニマル(伴侶動物)のケア専門技術者を43年にわたり社会に送り出してきました。私塾としてスタートした本学園は、専門学校、短期大学と歩みを進め、このたび4年制大学を開学することになりました。
科学的体系に基づいた動物看護学を確立することは、本学園創立者である、山ú±良寿が私塾を開学した当初からの目標でした。山ú±は女性の職業の確立を目指して、動物のケア・看護分野の養成機関を立ち上げました。その際、理想とする教育を行うためには、学校制度の枠にとらわれない自由な教育の必要性を感じて、当時としてはとてもユニークかつ先端的な講師陣とカリキュラムを導入しました。
大学の神学科の先生に生命倫理の講義をしていただくなど、さまざまな分野の大学や、動物園などから、野生動物学、動物心理学、昆虫学等の講師などを招聘しました。山ú±自らも経営学の教鞭をとっています。
―大学の原型がすでにできていた
そうですね。当時からのネットワークがヤマザキ学園大学の財産として継承されています。
教育環境の向上と動物看護学の確立のために、最終的には大学設立が必要になるとの構想が当初よりあり、専門学校、短期大学と順に学校整備に努めてきました。
しかし、振り返ると、決して平坦な道ではありませんでした。動物看護や美容など、動物関連の学びについての社会的認知度はいまでこそ市民権を得ていますが、以前は趣味的な学びとしてのイメージが強く、職業分野としての確立も日本は先進国のなかでも遅れていました。
実際、前例のない分野ということで、短大、大学の設立認可を得るのもかなりの時間を要しました。
しかし、業界の現状は変化しています。少子高齢化や核家族化が進むにつれ、動物関連市場は一兆円を超える市場にまで成長しています。
本学はそうした社会のニーズに応えられる知識と能力を持った人材養成を目指しています。
―大学開学後の具体的目標は
動物看護についての高度な知識・技術と教養を身に付けた人材を育成して社会に送り出すことですが、教育の循環を確立するための使命も感じています。
動物看護学は新しい学問であり、博士号を持つような研究者をこれから育てる必要があります。
ヤマザキ学園大学を中核として研究を進めていける環境を整備して、修士、博士課程をつくり、この分野のさらなる発展に努めたいと考えています。
―キャンパス整備は進んでいるか
本学は、二つのキャンパスがあります。都内でも閑静な住宅街で知られる松涛地区(東京都渋谷区)にある渋谷キャンパスで1年次を過ごします。緑豊かな南大沢キャンパス(東京都八王子市)には既存の1号館に加え、2号館を建設中です。こちらでは2年から4年次まで学びます。いずれも最新式の設備・機材を導入し、実験、実習に対応できる学習環境が揃っています。また、渋谷キャンパスには、動物看護のインターンができる動物病院があります。
―初めての入試となるが選抜方法は
選抜方法はAO入試、公募推薦入試そして一般入試、社会人入試となります。
今年度のAO入試、公募推薦入試は終了しましたが、一般入試はこれから受験可能な日程もあります。
一般入試では、生物Ⅰ、化学Ⅰから1科目必修とし、英語Ⅰ(除くリスニング)、国語総合(除く古文・漢文)、数学Ⅰから選択の2科目受験となります。
生命に対して畏敬の念を抱ける人材の育成
―教育の理念は
創立以来、本学園は、生きとし生けるものがともに尊重し、助け合い、それぞれの生命を輝かせて生きる人材育成を理想とし、それを教育理念として「生命を生きる」という言葉に込めています。創立者の山ú±は、太平洋戦争に学徒出陣し、命の大切さを身を持って体験しました。
そこから、動物が人とともに生きる社会、そして動物に関わる職業は、平和で安定した社会でなければ成立しないものだとの考えを持ちました。
―具体的な教育内容は
本学は動物看護学部単科の大学ですが、緩やかなコース制を学びの特長として持っています。3年次より、将来希望する職業の方向性や、学問の興味関心に応じて履修科目を選択できます。
2年次までの教養科目として、生命倫理学や心理学を学び、専門基礎科目として、病理学や動物生理学を履修します。また専門応用科目として動物臨床看護学の基礎等が必修となっています。
そして3年次より設けられているコースは、①動物看護②動物応用③動物介在福祉の三つとなります。この部分は高校の先生方や受験生にご理解いただきたいのですが、いずれかのコースに厳格に所属するという意味ではなく、履修科目の系統を分かり易く分けているとお考えください。ですから異なるコースの科目も選択できます。
―将来の目標に応じて幅広い選択科目が用意されているということか
いずれのコースを選択しても本学は四年間で、動物病院で看護職として勤務できる知識と技術を全員が身に付けられるカリキュラムにはなっていますが、例えば、在学中にアニマルセラピーについて強い関心を抱いたり、動物関連の出版に興味を持ったりとさまざまな可能性が考えられます。そうした学生の興味関心に対応できる幅広い選択科目を用意しています。
―専門学校との違いは
大学に求められる教育は一般教養を学んだ上に、高度な専門教育を受けて、業界のリーダーになれる人材を養成することです。本学園では短大で教育を行ってきましたが、大学ではさらに、深く学問を修め、研究も行っていきます。
現場力では専門学校卒業者、専門知識と指導力では大学卒業者と、職域のすみ分けができてくれば、動物関連業界の人材に厚みがでてきます。
例えば、動物病院内において、獣医師とスタッフをつなぐ中間職としての役割が期待できます。そのために、経営、法律、薬剤に関する知識を幅広く学べる大学の役割が重要になってきます。
さらには、動物看護師養成校の教育者としても期待されます。
―人間力も必要
そうです、これはヤマザキ学園として創立以来の方針ですが、礼儀、マナー指導を徹底してきました。知識以上に人としての心の豊かさとコミュニケーション能力が必要な分野です。それは対人関係だけではありません。優しさと礼儀が身に付いていなければ、動物、例えば犬は言うことを聞きません。
―取得可能\資格について
本学では、動物衛生看護師、動物医療技術師、ペット栄養管理士、実験動物技術師等の民間資格の受験資格が得られます。また、グルーミング(動物美容)や家庭犬のしつけ訓練士の受験資格も得ることができます。
現在日本では、動物関連の国家資格は、獣医師しかありません。
動物看護に関しては、管轄する省庁との関わりや現在の資格を所管している民間団体の資格統一を含め、国家資格とするためにはまだ課題が残されています。
本学が日本で初めて動物看護の大学として、人材を育成し動物関連業界に寄与していくことで、新たな方向性が見いだせると確信しています。
確立されている業界への就職
―就職についての見通しは
本学は4年後には第一期生を社会に送り出すことになりますが、就職についての心配はしていません。それは、本学園創立以来、輩出してきた卒業生たちの高い評価が業界にあるからです。ヤマザキ動物看護短期大学の求人を例に申し上げれば、日本全国から約1400件の求人をいただいています。
これまで9000名を超える卒業生のネットワークがあり、このたび大学設置認可申請にあたり、インターンの受け入れに700名以上の動物病院が賛同してくださいました。
本学では高度な専門教育を行うと同時に、ビジネスマナーを中心に社会人として必要な基礎力を身に付けさせます。
今までの事例や経験で感じることですが、動物に関わる分野を希望する学生は、観察力があり、他人の気持ちを察することが得意です。たとえどんな業界に進んでも対応できる能力があります。
―高校の先生方や生徒にメッセージを
本学は動物看護に特化した単科大学です。本学を希望される生徒は、学びの内容を事前に良く理解して、ミスマッチのないようにしてもらいたいと思います。入学後に途中で学業を中断することのないようにしていただきたいのです。また、大学の授業に対応できるように高校時代の学習はしっかりとしてきてください。
入学後は本学の教職員が学習から生活面まで、きめ細かく指導していきますので、保護者の方にも安心していただきたいと思います。
本学では学園創立以来培ってきた教育理念をふまえ、専門知識と教養のバランスのとれた人材を育成することで、社会に貢献していきたいと考えています。